課税対象とは何か

課税されるものなのか、課税されないものなのか。
普段、何気なく生活している中でも、こんな疑問を持たれたことはありませんか。
特に消費税については、よく疑問を持たれることではないでしょうか。
この点、基本的には税法において定められているのですが、その税法の解釈について
いろいろな考え方が議論されるところです。
ここで税法の解釈を巡って争われた判例について考えてみたいと思います。

【事案の概要】
・A社は競走用自動車の製造販売を営む会社であり、競走用自動車4台を製造・移出した。
・当時は物品税法で「小型普通用四輪自動車」は課税対象とされていた。
・これについてY税務署長はA社の競走用自動車に対し、物品税の賦課決定処分および
 無申告加算税の賦課決定処分を行った。
・A社はこれを不服として訴訟となった。

ここで、注目すべきはA社の主張でしょう。要旨を纏めますと、
「本件における各自動車は、その規格から小型四輪自動車に該当するが、その構造、
装置が道路運送車両法所定の保安基準に適合しないため、法令上は道路を走行することができず、
専ら自動車競走場における自動車競走のためにのみ使用されるものである。
よって「普通乗用」にはあたらない。」というものでした。

この裁判における最大の争点は「普通乗用自動車」に該当するかどうかということですね。
この判決における多数意見は、「ある自動車が普通乗用自動車に該当するか否かは、
当該自動車の性状、機能、使用目的等を総合して判定すべき」であり、本件自動車についても、
人の移動という乗用目的のために使用されるものであることに変わりはない、との解釈でした。

一方、反対意見は「およそ社会における自動車の目的は、人や物の運搬、すなわち、ある場所から
他の場所に運ぶことによる社会的、経済的効用を達成するところにある。一般に、自動車は必ず人が
運転するものであるから、本件の自動車もこの意味で人の乗用を伴うものであるが、
このこと自体で乗用自動車であるか、貨物自動車ないし特殊自動車であるかの指標にはできず、
従って、物品税法上の課税対象と定義することはできない」という主張でした。。

結局、判決では僅差で課税対象となったようですが、税法においても条文で使われている言葉の定義を
巡って様々な議論が交わされるものであるということを考えさせられる事例だと思います。

 

2016年03月28日