法人税法は22条2項で益金に算入すべきものとして「資産の販売、
有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受け
その他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額」
と定めています。
ここで無償による資産の譲渡や役務提供が益金となることの意義について
考えてみたいと思います。
【事案の概要】
X社は子会社A社に対して約3千万円の無利息融資を行った。
これに対しY税務署長は、本件無利息融資に対し、年率10%相当額を
寄附金と認定し、寄附金損金不算入額分を加算計上する更正処分を行った。
X社はこれを不服として異議申し立てを行った。
判決の考え方は以下のとおりです。
「法人税22条2項の規定は、それが私法上有効に成立した法律行為の結果として
生じたものであるか否かに拘わらず、また、金銭の形態をとっているかその他の
経済的利益の形をとっているかの別なく、資本等取引以外において資産の増加の
原因となるべき一切の取引によって生じた収益の額を益金に算入すべきものとする
趣旨と解される。そして資産の無償譲渡、役務の無償提供は、実質的に見た場合、
資産の有償譲渡、役務の有償譲渡によって得た代償を無償で給付したのと同じである
ところから、担税力を示すものとみて、収益発生事由としたものと考えられる。」
若干、わかりにくい表現ですが、簡単に言い換えると、無償の資産の譲渡や
役務の提供というのは、一旦有償による取引を行った後、その対価を無償で
相手に交付する行為、と捉えているようですね。
これを仕訳で示してみると、
現金預金 10,000 受取利息 10,000
寄附金 10,000 現金預金 10,000
このような考え方になります。
そして、収益計上した受取利息はそのまま益金となり、費用計上した寄附金については、
損金算入限度額の範囲内で損金として計上されることになります。
税務調査などで思わぬ指摘を受けないよう、無利息融資や無償の取引には
気を付けたいものです。