土地の時効取得と税金の関係について、判例を参考に考えてみましょう。
まずは事案の概要を整理します。
【事案の概要】
・被相続人Aは、甲、乙、丙に対し、土地を1/3づつ相続させる遺言をしていた。
・当該土地はZにより占有されていた。
・Aが死去し、甲、乙、丙は当該土地の所有権持分登記を行うとともに相続税の申告書を提出した。
・一方、Zは当該土地について時効取得を理由とする所有権移転登記を求める訴えを提起し、勝訴した。
・土地を失った甲らは、相続による土地の取得はなかったものとして、相続税申告書の更生の請求を行った。
・更生の請求は認められず、裁判となった。
とても難しい論点ですね。相続したと思った土地が後から時効を援用された場合、相続税の更生が認められるかどうか。
納税者側からみれば、土地を失った上に相続税まで課せられたら大変なことになってしまいます。
しかしながら、裁判では納税者側の主張は認められませんでした。
理由のひとつとして「時効」に対する考え方があります。
「時効により所有権を取得する者は、時効を援用するまではその物に対する権利を取得しておらず、
一方、本来の所有者は占有者が時効を援用するまではその物に対する権利を有していた」ということができます。
そうしますと、相続の開始時点では時効が完成していなかったため、その時点で所有権を有していたといえます。
よって相続税が課せられると判断されたようです。
納税者にとっては踏んだり蹴ったりの結果になってしまったようですが、
くれぐれも不動産を取得する場合には、現地調査を怠らないようにしましょうね。