第三十六問(意思表示)

【問題 36】

意思表示に関する次の①~④の記述のうち、民法上、その内容が適切でないものを 1 つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。

① Aは、Bに甲建物を売却するつもりがないのに、Bと通謀して、甲建物をBに売却する旨の虚偽の売買契約を締結し、AからBへの甲建物の所有権移転登記を経た。この場合において、AとBが通謀して虚偽の売買契約を締結した事情を知らない第三者CがBから甲建物を買い受けたときは、Aは、AB 間の契約は虚偽表示により無効である旨をCに対抗することができない。

② Aは、Bが所有する甲土地の近隣に鉄道の駅が新設される計画を知り、Bとの間で、甲土地を購入する旨の売買契約を締結した。しかし、当該駅新設の計画は、当該売買契約の締結前に既に中止となっていたが、Aはそれを知らなかった。この場合において、Aは、当該駅新設が甲土地を購入する動機である旨をBに表示していなかったときは、Bに対し、当該売買契約を錯誤により取り消すことができない。

③ Aは、Bの詐欺により、Bとの間でBに甲絵画を売却する旨の売買契約を締結し、Bに甲絵画を引き渡した後、Bは、詐欺の事情を知らず、知らないことに過失のない第三者Cに甲絵画を売却した。その後、Aは、詐欺による意思表示を理由として AB間の売買契約を取り消した場合、その取消しをCに対抗することができない。

④ Aは、Bの強迫により、Bとの間でBに甲土地を売却する旨の売買契約を締結し、AからBへの甲土地の所有権移転登記を経た後、Bは、強迫の事情を知らず、知らないことに過失のない第三者Cに甲土地を売却した。その後、Aは、強迫による意思表示を理由として AB 間の売買契約を取り消した場合、その取消しをCに対抗することができない。

 

 

 

【正解】     ④

 

 

 

⓵(〇)相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする(民法94条1項)。この意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない(民法94条2項)。

②(〇)意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる(民法95条1項)。

一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤

二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

この意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる(民法95条2項)。

③(〇)相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる(民法96条2項)。詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない(民法96条3項)。

④(×)詐欺による取消しと異なり、強迫による意思表示は善意の第三者にも対抗できる。

 

 

 

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2024年03月04日