第6回講義レジュメ(貸金業法⑥)

1.返済能力の調査

・貸金業者は、貸付けの契約を締結しようとする場合には、顧客等の収入又は収益その他の資力、信用、借入れの状況、返済計画その他の返済能力に関する事項を調査しなければならない。

・返済能力の調査は、個人・法人問わず必要であり、また保証人についても必要となる。

・貸金業者が個人である顧客等と貸付けの契約(極度方式貸付けに係る契約を除く。)を締結しようとする場合には、返済能力に関する調査を行うに際し、指定信用情報機関が保有する信用情報を使用しなければならない。

・個人である顧客と貸付の契約をしようとする場合、自社の貸付の合計が50万円を超えるとき、或いは他社の貸付と合計して100万円を超えるときは、返済能力の調査に際し、「資力を明らかにする書面」の提供を受けなければならない。

・返済能力の調査に関する記録を作成し保存しなければならない。(最終の返済期日、その前に弁済されたときは債権が消滅した日まで)

・保証契約の場合は、貸付契約の最終返済期日まで、或いは債務が消滅した日まで。

・極度方式基本契約の極度額の増額で、相手方と連絡できないことにより一時的に極度額を引き下げた後、連絡ができたことにより元の極度額に増額する場合、例外的に返済能力の調査は不要となる。

・返済能力の調査により、当該貸付けの契約が個人過剰貸付契約その他顧客等の返済能力を超える貸付けの契約と認められるときは、当該貸付けの契約を締結してはならない

 

2.基準額超過極度方式基本契約に係る調査

・下記の要件に該当した場合、指定信用情報機関の信用情報を利用して「基準額超過極度方式基本契約」に該当するかどうか調査しなければならない。

 ① 極度方式基本契約を締結した日から同日以後一月以内の一定の期日までの期間及び当該一定の期日の翌日以後一月ごとの期間に区分したそれぞれの期間において、当該期間内に行つた当該極度方式基本契約に基づく極度方式貸付けの金額の合計額が五万円を超え、かつ、当該期間の末日における当該極度方式基本契約に基づく極度方式貸付けの残高の合計額が十万円を超えること。

 ② 極度方式貸付の停止を解除しようとするとき。

・上記①又は②に該当しないときであっても3か月毎の定期的な調査も必要(残高が10万円以下或いは貸付停止の措置を講じている場合は不要)。

・極度方式基本契約の極度額と他の貸付残高、他社の貸付残高の合計額が基準額(年収の1/3)を超えると基準額超過極度方式基本契約となる(除外貸付け等は除く)。

 

3.基準額超過極度方式基本契約に係る必要な措置

貸金業者は、個人顧客と極度方式基本契約を締結している場合において、基準額超過極度不式基本契約に係る調査により、基準額超過極度方式基本契約に該当すると認められるときは、極度方式貸付けを抑制するために必要な措置を講じなければならない。

・当該極度方式基本契約が基準額超過極度方式基本契約に該当しないようにするため必要な当該極度方式基本契約の極度額の減額

・当該極度方式基本契約に基づく新たな極度方式貸付けの停止

 

4.特定公正証書に係る制限

特定公正証書とは、債務者等が貸付けの契約に基づく債務の不履行の場合に直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載された公正証書をいう

・ 貸金業を営む者は、貸付けの契約について、債務者等から、当該債務者等が特定公正証書の作成について、公証人に嘱託することを代理人に委任することを証する書面を取得してはならない。 ⇒わかりづらい条文ですが、要するに貸金業者が(特定公正証書を作成するために)委任状を取得してはならないということです。

・貸金業を営む者は、貸付けの契約について、債務者等が特定公正証書の作成を公証人に嘱託することを代理人に委任する場合には当該代理人の選任に関し推薦その他これに類する関与をしてはならない

・貸金業者は、貸付けの契約について、特定公正証書の作成を公証人に嘱託する場合には、あらかじめ債務者等となるべき資金需要者等に対し、次に掲げる事項について書面を交付して説明しなければならない。

 ① 当該貸付けの契約に基づく債務の不履行の場合には、特定公正証書により、債務者等が直ちに強制執行に服することとなる旨 。

 ② 特定公正証書に記載された内容の債務の不履行の場合には、貸金業者は、訴訟の提起を行わずに、特定公正証書により債務者等の財産に対する強制執行をすることができる旨。

・当該書面には、上記の事項を日本工業規格Z八三〇五に規定する八ポイント以上の大きさの文字及び数字を用いて明瞭かつ正確に記載しなければならない。

 

5.公的給付に係る預金通帳等の保管等の制限

・貸金業を営む者は、貸付けの契約について、公的給付(年金等)がその受給権者である債務者等又は債務者等の親族その他の者の預金又は貯金の口座に払い込まれた場合に当該預金又は貯金の口座に係る資金から当該貸付けの契約に基づく債権の弁済を受けることを目的として、次に掲げる行為をしてはならない。

 ① 特定受給権者の預金通帳等(カードや年金証書含む)の引渡し若しくは提供を求め、又はこれらを保管する行為

 ② 特定受給権者に当該預金又は貯金の払出しとその払い出した金銭による当該債権の弁済をその預金又は貯金の口座のある金融機関に委託して行うことを求める行為

 

2022年09月20日