第三十二問(相殺)

【問題 32】

AのBに対する金銭債権を「甲債権」とし、BのAに対する金銭債権を「乙債権」とする。この場合に関する次の①~④の記述のうち、民法上、その内容が適切なものを 1 つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。

① 甲債権の弁済期が 11 月 1 日であり、乙債権の弁済期が同年 10 月 15 日である場合、Aは、同年 10 月 15 日の時点で、甲債権と乙債権とを相殺することができる。

② Aは、甲債権と乙債権とを相殺するにあたり、相殺の意思表示に条件又は期限を付することができる。

③ 甲債権と乙債権とが相殺に適するようになった後に、甲債権が時効によって消滅した場合であっても、Aは、甲債権と乙債権とを相殺することができる。

④ 甲債権が他人から譲り受けた債権である場合において、その譲受けの時期が、乙債権に係る債権差押命令がAに送達された後であっても、甲債権が当該差押え前の原因に基づき発生したものであるときは、Aは、甲債権と乙債権との相殺をもって乙債権の差押債権者に対抗することができる。

 

 

 

【正解】    ③

 

 

①(×)二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない(民法505条1項)。甲債権の期日が未到来の状況で乙債権(Aから見たら債務)と相殺はできない。

②(×)相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない(民法506条1項)。

③(〇)時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる(民法508条)。

④(×)差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない(民法511条2項)。

 

 

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2021年12月15日