第三十二問(相殺)

【問題 32】

A社はB社に対して貸金債権を有しており、B社はA社に対して売掛金債権を有している。この場合に関する次の①〜④の記述のうち、その内容が適切なものを1つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。なお、A社とB社との間に相殺についての特段の合意はないものとする。

① A社は、B社が破産手続開始の決定を受けた場合であっても、原則として、破産手続によらないで貸金債権と売掛金債権とを対当額で相殺することができる。

② A社が、相殺によって、その対当額について、B社のA社に対する売掛金債権の支払いを免れるためには、A社からB社に対する相殺の意思表示をしなければならず、A社がB社に相殺の意思表示をした場合、相殺の効力は、当該相殺の意思表示がなされた時点で生ずる。

③ A社のB社に対する貸金債権の弁済期が到来している場合であっても、B社のA社に対する売掛金債権の弁済期が到来していないときは、A社は、両債権を対当額で相殺することができない。

④ B社に対して金銭債権を有するC銀行が売掛金債権を差し押さえた場合、当該差押えの時期とA社がB社に対して有する貸金債権を取得した時期との先後を問わず、A社は、もはや貸金債権と売掛金債権とを相殺することができない。

 

 

 

【正解】   ①

 

①(○)破産債権者は、破産手続開始の時において破産者に対して債務を負担するときは、破産手続によらないで、相殺をすることができる(破産法67条1項)。

②(×)相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする(民法506条1項)。相殺の意思表示は、双方の債務が互いに総裁に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる(同条2項)。

③(×)A社が有する債権(自働債権)の弁済期が到来していれば、B社がA社に対して有する債権(受働債権)の弁済期が到来していなくても、両債権を対等額で相殺できる(判例の考え方)。

④(×)A社の貸金債権を取得した時期が差押えの時期よりも早ければ、貸金債権と売掛金債権を相殺できる。

 

 

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2017年02月25日