第四十二問(改正民法)

【問題42】

次の①〜④の記述のうち、民法上、その内容が適切でないものを1つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。なお、本問において、「改正前民法」とは平成29年法律第44号により改正される前の民法をいい、「改正民法」とは同法により改正された後の民法をいうものとする。

① Aは、2020 年3月1日に、Bとの間で、金銭消費貸借契約を締結しBに10万円を貸し付けた。この場合、AのBに対する貸付金債権の消滅時効の期間については、改正前民法が適用され、当該債権は、10年間行使しないときは、時効によって消滅する。

② Aは、2020 年3月1日に、Bとの間で、債権の譲渡を禁止する旨の特約を付した金銭消費貸借契約を締結しBに10万円を貸し付けた。その後、Aは、2020 年5月1日に、Cとの間で、AのBに対する貸付金債権を譲渡した。この場合、AのCに対する債権の譲渡については、改正前民法が適用され、AとCとの間の債権譲渡契約は無効となる。

③ Aは、2020 年3月1日に、Bとの間で、定型取引(注)に係る契約を締結した。この場合において、2020 年3月31 日以前に、A又はBが書面又は電磁的記録により反対の意思を表示していないときは、当該契約については、改正民法が適用される。

④ Aは、2010年5月1日に、Bとの間で、金銭消費貸借契約を締結しBに10万円を貸し付けた。BがAに借入金を返済していない場合において、2020 年4月15 日に天災その他避けることのできない事変が生じた。この場合、天災等による時効の完成猶予については、改正民法が適用され、その障害が消滅した時から3か月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

(注) 定型取引とは、改正民法第548 条の(定型約款の合意)第1項に規定する定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの)をいう。

 

 

【正解】   ②

 

 

①(〇)民法改正前の契約であるため改正前民法の適用により10年で時効となる。

②(×)改正前民法では譲渡禁止特約は可能であるが、善意の第三者には対抗できないものとされていた。改正後の民法においては、譲渡禁止特約があっても債権譲渡は可能である(民法466条第2項)。

③(〇)定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす(民法548条の2)。

 1)定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。

 2)定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。

④(〇)時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため裁判上の請求等又は強制執行等に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から3か月を経過するまでの間は、時効は、完成しない(民法161条)。

 

 

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2020年11月17日