第三十三問(相殺)

【問題33】

AのBに対する金銭債権を「甲債権」とし、BのAに対する金銭債権を「乙債権」とする。甲債権と乙債権との相殺に関する次の①〜④の記述のうち、民法及び破産法上、その内容が適切なものを1つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。なお、甲債権及び乙債権は、2020年4月1日以降に生じたものとする。

① 甲債権の弁済期が10 月15 日であり、乙債権の弁済期が同年11 月1日である場合、同年10 月15 日の時点においては、乙債権の弁済期が到来していないため、Aは、甲債権と乙債権とを相殺することができない。

② 甲債権が時効によって消滅した後は、甲債権が時効により消滅する以前に、甲債権と乙債権とが相殺に適するようになっていたときであっても、Aは、甲債権と乙債権とを相殺することができない。

③ Aに対して金銭債権を有するCの申立てに基づき甲債権が差し押さえられ、その差押命令がBに送達されていた場合において、Bが乙債権を当該差押命令の送達後に取得したときは、Bは、甲債権と乙債権との相殺をもってCに対抗することができる。

④ Aが破産債権者であり、Bが破産者である場合において、Aが甲債権を破産手続開始前に取得し、Bが乙債権を破産手続開始前に取得していたときは、Aは、破産手続によらないで、甲債権と乙債権とを相殺することができる。

 

 

【正解】   ④

 

 

①(×)Aの持つ甲債権の期限が到来しているため、Aは期限の利益を放棄して乙債権と相殺することができる。

②(×)時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる(民法508条)。

③(×)差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる(民法511条第1項)。

④(〇)破産債権者は、破産手続開始の時において破産者に対して債務を負担するときは、破産手続によらないで、相殺をすることができる(破産法67条)。

 

 

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2020年11月17日