第二十九問(意思表示)

【問題29】

意思表示に関する次の①〜④の記述のうち、民法上、その内容が適切なものを1つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。なお、本問における契約等は、2020年4月1日以降に行われているものとする。

① Aは、Bとの間で、実際には甲建物をBに売却するつもりであるのに、誤って自己が所有する乙建物をBに売却する旨の契約を締結した。この場合において、BがAに錯誤があることを知っていたときは、Aに重大な過失があったとしても、Aは、錯誤による意思表示を理由として、当該契約を取り消すことができる。

② Aは、第三者Cの詐欺により、Bとの間で、甲建物をBに売却する旨の契約を締結した。この場合において、Bが、Cによる詐欺の事実を知らず、かつ、知ることができなかったとしても、Aは、詐欺による意思表示を理由として、当該契約を取り消すことができる。

③ Aは、Bの強迫により、Bとの間でBに甲建物を売却する旨の売買契約を締結し、AからBへの甲建物の所有権移転登記を経た後、Bは、この事情を知らず、かつ、知らないことに過失のない第三者Cに甲建物を売却した。その後、Aは、強迫による意思表示を理由としてAB 間の売買契約を取り消した。この場合、Aは、その取消しをCに対抗することができない。

④ Aは、実際には甲建物をBに売却する意思がないのに、Bと通謀して、Bに甲建物を売却する旨の虚偽の売買契約を締結し、AからBへの甲建物の所有権移転登記を経た。その後、Bは、この事情を知っている第三者Cに甲建物を売却した。この場合、Aは、Cに対し、AB間の売買契約が虚偽表示により無効であることを主張することができない。

 

 

【正解】   ①

 

 

①(〇)錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、錯誤による意思表示の取消しをすることができない(民法95条3項)。

 1)相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。

 2)相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。

②(×)相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる(民法96条2項)。

③(×)強迫による意思表示は取消すことができる(民法96条1項)。この取消しは、善意の第三者に対抗できるものと解される。

④(×)相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする(民法94条1項)。この無効は善意の第三者に対抗することができないが、悪意の第三者には対抗できる。

 

 

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2020年11月17日