第三十二問(債務不履行責任)

【問題 32】

債務不履行の責任等に関する次の①〜④の記述のうち、民法上、その内容が適切なものを1つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。

① 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

② 債務の不履行に関して債権者に過失があったときであっても、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定めることはできない。

③ 当事者が債務の不履行について損害賠償の額を予定した場合であっても、当事者の一方が実際に生じた損害の額を証明したときは、裁判所は、当事者が予定した損害賠償の額を増減することができる。

④ 金銭の給付を目的とする債務の不履行に基づく損害賠償の額は、当事者間で利息の約定がなされていた場合、約定利率と法定利率のうち低い利率をもって計算された額となる。

 

 

 

【正解】   1

 

 

①(○)債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする(民法416条1項)。特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる(同条2項)。

⇒(改正後416条)債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。

2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

②(×)債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める(民法418条)。

③(×)当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない(民法420条1項)。

⇒(改正後420条)当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。

 2 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。

 3 違約金は、賠償額の予定と推定する。

改正民法では「裁判所は、その額を増減させることができない」は条文から削除されたため、裁判所が増減させることは可能と解される。

④(×)金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による(民法419条1項)。

⇒(改正後419条1項)金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。

 

 

 

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2017年11月21日