第四十問(債権の消滅)

【問題40】

AはBに対して貸付金債権(以下、本問において「本件債権」という。)を有している。この場合における債権の消滅に関する次の①〜④の記述のうち、民法上、その内容が適切でないものを1つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。

① AがCとの間で本件債権をCに譲渡する契約を締結し、AからBにその旨の債権譲渡通知が有効になされた後に、当該契約は解除された。その後、Bは、Cから本件債権の弁済の請求を受けてCに弁済した。Bが、当該契約が解除されたことを過失なく知らなかった場合、BがCに対してした弁済は、その効力が認められる。

② Aが本件債権を有する一方で、BはAに対して不法行為に基づく損害賠償債権を有する場合、Aは、本件債権と当該損害賠償債権とを相殺することができない。

③ Aが死亡し、Bがその唯一の相続人としてAを相続した場合、本件債権が第三者の権利の目的であるときを除き、本件債権は、混同により消滅する。

④ Aが、B及びDとの間で、本件債権を消滅させてDのBに対する貸付金債権を生じさせる旨の債権者の交替による更改の契約を締結する場合、当該更改の契約は、確定日付のある証書によってしなければその効力を生じない。

 

 

 

【正解】  ④

 

①(〇)債権の準占有者に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する(民法478条)。⇒(改正後478条)受領権者(債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう。以下同じ。)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。

②(○)債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない(民法509条)。本肢ではAが不法行為による債務者であるため、Aから相殺することはできない。⇒(改正後509条)次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。

 一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務

 二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)

③(○)債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない(民法520条)

④(×)債権者の交代による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない(民法515条)。確定日付のある証書は第三者の対抗要件であって、これがなければ効力が生じないものではない。⇒(改正後515条)債権者の交替による更改は、更改前の債権者、更改後に債権者となる者及び債務者の契約によってすることができる。
 2 債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない。

 

 

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2016年11月25日