第三十七問(代理権)

【問題37】

Aがその所有する甲自動車をBに売却する旨の委任に係る代理権(以下、本問において「本件代理権」という。)を第三者であるCに付与する場合等に関する次の①〜④の記述のうち、民法上、その内容が適切でないものを1つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。

① Cが被保佐人である場合、Aは、Cに対し、本件代理権を付与することはできない。

② Cは、本件代理権を付与されていた場合、Aの許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することはできない。

③ Cは、本件代理権を付与されていただけでなく、Bからも甲自動車を購入する旨の代理権を付与されていた。この場合において、Cが、A及びBの事前の許諾を得ることなく、A及びBの双方の代理人として、甲自動車をBに売却する旨の売買契約を締結したときは、Cの当該行為は無権代理行為となる。

④ Cは、本件代理権を付与された後、本件代理権に係る代理行為をする前に、後見開始の審判を受け成年被後見人となった。この場合、本件代理権は消滅する。

 

 

【正解】  ①

 

 

①(×)代理人は行為能力者であることを要しない(民法102条)ため、Cが被保佐人であっても代理権を付与することができる。⇒(改正後102条)制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。

②(○)委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない(民法104条)。

③(○)同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない(民法108条)。⇒(改正後108条)同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

 2 前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

④(○)後見開始の審判を受けたことは代理権の消滅事由に該当する(民法111条1項2号)ため、代理権は消滅する。

 

 

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2016年11月25日