第二十八問(意思表示)

【問題28】

Aが所有する甲土地の売却に係る意思表示に関する次の①〜④の記述のうち、民法上、その内容が適切なものを1つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。

① Aは、実際には甲土地をBに売却する意思がないのに、Bとの間でBに甲土地を売却する旨の売買契約を締結した。この場合、BがAには甲土地を売却する意思がないことを知っていたか否かにかかわらず、Aは、Bに対し、AB間の売買契約が心裡留保により無効であることを主張することができない。

② Aは、実際には甲土地をBに売却する意思がないのに、Bと通謀して、Bに甲土地を売却する旨の虚偽の売買契約を締結し、AからBへの甲土地の所有権移転登記を経た。その後、Bは、この事情を知らない第三者Cに甲土地を売却した。この場合、Aは、Cに対し、AB間の売買契約が虚偽表示により無効であることを主張することができない。

③ Aは、Bの詐欺により、Bとの間でBに甲土地を売却する旨の売買契約を締結し、AからBへの甲土地の所有権移転登記を経た後、Bは、この事情を知っている第三者Cに甲土地を売却した。その後、Aは、詐欺による意思表示を理由としてAB間の売買契約を取り消した。この場合、Aは、その取消しをCに対抗することができない。

④ Aは、Bの強迫により、Bとの間でBに甲土地を売却する旨の売買契約を締結し、AからBへの甲土地の所有権移転登記を経た後、Bは、この事情を知らない第三者Cに甲土地を売却した。その後、Aは、強迫による意思表示を理由としてAB間の売買契約を取り消した。この場合、Aは、その取消しをCに対抗することができない。

 

 

【正解】  ②

 

①(×)意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのために効力を妨げられない。ただし、相手方がその真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は無効とする(民法93条)。BがAには甲土地を売却する意思がないことを知らなかった場合、Aの意思表示は有効となる。一方、BがAの真意を知っていた場合、Aはその意思表示の無効を主張できる。

②(○)相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効とする(民法94条1項)。ただし、当該意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない(同条2項)。AB間の意思表示は通謀虚偽表示であり無効であるが、善意の第三者であるCに対して無効を主張できない。

③(×)詐欺又は強迫による意思表示は取り消すことができる(民法96条1項)。相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる(同条2項)。事情を知っているCに対しては、取消を主張することができる。

④(×)詐欺の場合には善意の第三者に対して取り消しを主張することができない(民法96条3項)が、強迫の場合には取消を主張することができる。詐欺については本人にも一部の責任を認めているのに対し、強迫については本人の保護の要請が強いためである。

 

 

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2016年11月25日