第二十九問(瑕疵ある意思表示)

【問題 29】

Aは、Bに対し、自己の所有する甲建物をBに売却する旨の契約を締結しようとしている。この場合に関する次の①〜④の記述のうち、民法上、その内容が適切なものを1つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。

① Aは、Bに甲建物を売却するつもりがないのに、Bと通謀して、甲建物をBに売却する旨の虚偽の契約を締結し、AからBへの甲建物の所有権移転登記を経た。この場合において、事情を知らないCがBから甲建物を買い受けたとしても、Aは、AB間の契約は虚偽表示により無効である旨をCに対抗することができる。

② Aは、Dの詐欺により、Bとの間で、甲建物をBに売却する旨の契約を締結した。この場合において、Bが、Dによる詐欺の事実を知らなかったとしても、Aは、詐欺による意思表示を理由として、当該契約を取り消すことができる。

③ Aは、Bの強迫により、Bとの間で、甲建物をBに売却する旨の契約を締結した後、Bは、強迫の事実を知らないEに甲建物を売却した。この場合において、Aは、強迫の意思表示を理由としてAB間の契約を取り消したときは、その取消しをEに対抗することができる。

④ Aは、Bとの間で、実際には甲建物をBに売却するつもりであるのに、誤って自己が所有する乙建物をBに売却する旨の契約を締結した。この場合において、Aに重大な過失があったとしても、Aは、当該契約は錯誤により無効であることをBに主張することができる。

 

 

 

 

【正解】   3

 

1(×)通謀虚偽表示による無効(民法94条1項)は善意の第三者に対抗できない。よって、AはCに対抗できない。

2(×)詐欺による取消は善意の第三者に対抗できない(民法96条3項)。よってAは契約を取り消すことができない。

3(○)強迫による無効は善意の第三者にも対抗できる。強迫の場合には、表意者の保護が優先するからである。

4(×)錯誤無効は、表意者に重大な過失があったときには主張することができない(民法95条)。⇒(改正後95条3項) 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。

 一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。

 二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。

 

 

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2016年04月08日