第三十九問(相殺)

【問題 39】

AはBに対して金銭債権(以下、本問において「甲債権」という。)を有する一方、BもAに対して金銭債権(以下、本問において「乙債権」という。)を有している。この場合に関する次の①〜④の記述のうち、その内容が適切でないものを1つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。

① 甲債権が売買代金債権であり乙債権が貸付金債権である場合において、甲債権が時効によって消滅した。この場合であっても、甲債権が時効により消滅する以前に、甲債権と乙債権とが相殺に適するようになっていたときは、Aは、甲債権と乙債権とを相殺することができる。

② 甲債権が不法行為に基づく損害賠償債権であり乙債権が貸付金債権である場合、Aは、甲債権と乙債権とを相殺することができない。

③ 甲債権が請負代金債権である場合において、Aに対して貸付金債権を有するCの申立てに基づき甲債権が差し押さえられ、その差押命令がBに送達された。その後、BがAに対して貸付金債権である乙債権を取得したときは、Bは、甲債権と乙債権との相殺をもってCに対抗することができない。

④ 甲債権が東京をその債務の履行地とする売買代金債権であり乙債権が大阪をその債務の履行地とする貸付金債権である場合、Aは、甲債権と乙債権とを相殺することができる。

 

 

 

【正解】    2

 

1(○)時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる(民法508条)。

2(×)債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない(民法509条)。本問では不法行為による債務者Bの側から相殺はできないが、債権者であるAの側から相殺することはできる。

3(○)支払の差し止めを受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができない(民法511条)。

4(○)相殺は、双方の債務の履行地が異なるときであっても、することができる。この場合において、相殺をする当事者は、相手方に対し、これによって生じた損害を賠償しなければならない(民法507条)。

 

 

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2016年04月19日