第三十四問(契約の効力)

【問題 34】

AはX県に住居を有する個人であり、BはX県の遠隔地にあるY県に住居を有する個人である。Aは、Bがその所有する絵画(以下、本問において「絵画」という。)の売却を希望していることを雑誌で知り、絵画を購入しようとしている。この場合に関する次の①〜④の記述のうち、民法上、その内容が適切なものを1つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。

① Aは、承諾の通知を必要としない旨を表示して絵画を購入する旨の申込みの通知をBに発送し、当該通知はBに到達した。この場合、AとBとの間の契約は、Bによる承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。

② Aは、絵画を購入する旨の申込みの通知をBに発送し、当該通知はBに到達したが、Aは、当該通知がBに到達する前に死亡していた。この場合、BがAの死亡の事実を知っていたか否かにかかわらず、Aによる絵画を購入する旨の申込みは、その効力を失う。

③ Aは、絵画をAの自宅に配達してもらう条件で絵画を購入する旨の申込みの通知をBに発送し、当該通知はBに到達した。これに対し、Bは、Aが絵画を受け取りに来るという条件であればAに絵画を売却する旨の通知をAに発送し、当該通知はAに到達した。この場合、Bの通知がAに到達した時点で、Bが付した条件による売買契約が成立する。

④ Aは、承諾の期間を定めて絵画を購入する旨の申込みの通知をBに発送し、当該通知はBに到達したが、Bは、当該承諾の期間を過ぎても承諾の通知をAに発送しなかった。この場合、Aによる絵画を購入する旨の申込みは、その効力を失わない。

 

 

 

【正解】    1

 

1(○)申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する(民法526条2項)。

2(×)隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、又は行為能力を喪失したときであっても、そのためにその効力を妨げられない(民法97需2項)。ただし、申込者の死亡若しくは行為能力の喪失の事実を知っていた場合には適用しない(民法525条2項)。BがAの死亡につき、知っていた場合には申込みの効力を失うが、知らなかった場合には申込みの効力は失われない。

3(×)隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する(民法526条1項)。本肢においては、双方で承諾していないので、売買契約は成立しない。

4(×)申込者が承諾の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申し込みは、その効力を失う(民法521条2項)。

 

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2016年04月19日