第三十問(金銭消費貸借契約)

【問題 30】

Aは、Bとの間で、4月15 日に、返済期限を同年10月15 日と定めて金銭消費貸借契約を締結しBに金銭を貸し付けた。この場合に関する次の①〜④の記述のうち、民法上、その内容が適切なものを1つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。

① Bは、本件金銭消費貸借契約に基づく借入金債務を担保するために自己の所有する建物に抵当権を設定していたが、10月15日が到来する前にBの過失により当該建物を滅失させた。この場合、Aは、10 月15 日が到来するまでは、Bに対し借入金債務の弁済を請求することができない。

② Aは、Bが10 月15 日を経過しても借入金債務を弁済しない場合、相当の期間を定めてBにその履行の催告をすることなく直ちに、本件金銭消費貸借契約の解除をすることができる。

③ Aは、Bに対して本件金銭消費貸借契約に基づく貸金債権を有する一方で、Bに対し弁済期を11 月1日とする売買代金債務を負っている。この場合、Aは、10 月15日の時点で、Bに対して負う売買代金債務についての期限の利益を放棄して、Bに対して有する貸金債権とBに対して負う売買代金債務とを相殺することができる。

④ Bが10 月15 日を経過しても借入金債務を弁済しない場合、AとBが、本件金銭消費貸借契約において、貸付けに係る利率及び遅延損害金の額を定めているか否かを問わず、Aは、Bに対し、元本に対する割合を年14.6%として計算した額の損害賠償を請求することができる。

 

 

 

【正解】    3

 

1(×)債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき、債務者は期限の利益を主張することができない(民法137条2項)。よってAは10月15日の到来を待つことなくBに対し借入金債務の弁済を請求することができる。

2(×)当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる(民法541条)。

3(○)自働債権の期限の利益を放棄して相殺することは可能である。

4(×)金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による(民法419条1項)。

 

 

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2016年04月18日