【問題 29】
Aは、Bが所有する不動産甲をCに売却する旨の契約を締結しようとしている。この場合に関する次の①〜④の記述のうち、民法上、その内容が適切なものを1つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。
① Aは、Bから不動産甲を売却する代理権を付与されていたが、AとBとの間の当該代理権に係る委任契約が終了したため、Aの当該代理権は消滅した。その後、Aは、当該代理権の消滅を過失なく知らないCとの間で、Bの代理人として、Cに不動産甲を売却する旨の契約を締結した。この場合、Bは、Aの代理権が消滅していることをCに対抗することができる。
② Aは、Bから不動産甲を売却する代理権を付与されていたが、Cとの間で、当該代理権に基づく代理行為を行うに際しBのためにすることを示さないで、Cに不動産甲を売却する旨の契約を締結した。この場合において、Cが、AがBのためにすることを知り、又は知ることができたときは、当該契約はBに対して直接にその効力を生ずる。
③ Aは、Bから何らの代理権も付与されていないのに、Cとの間で、Bの代理人として、Cに不動産甲を売却する旨の契約を締結した。この場合において、AがBの追認を得ることができなかったときは、Aは、Cに対して、履行又は損害賠償のいずれかの責任を自らが選択して負わなければならない。
④ Aは、BからBが所有する不動産乙を売却する代理権を付与されていたが、Cとの間で、Bの代理人として、Cに不動産甲を売却する旨の契約を締結した。この場合、不動産甲を売却する権限がAにあるとCが信ずべき正当な理由があるときであっても、Bは、Aが当該契約を締結した行為について、その責任を負わない。
【正解】 2
1(×)第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない(民法109条)。代理権の消滅について過失なく知らなかった第三者に対しては、代理権が消滅していることについて、本人は対抗できない。
2(○)代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、本人に対して直接にその効力を有する(民法100条)。
3(×)他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う(民法117条1項)。
4(×)代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときは、本人が責任を負う。