第三十五問(意思表示)

【問題35】

意思表示に関する次の①〜④の記述のうち、その内容が適切でないものを1つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。

① Xは、実際には売却するつもりがないのに、Yと通謀して、自己所有の不動産AをYに売却したように装い、その登記をYに移転した。その後、Yは、当該事情を知っている第三者Zに不動産Aを売却した。この場合、民法上、Xは、Zに対し、XY間の売買の無効を主張することができる。

② Xは、実際には自己所有の不動産BをYに売却するつもりであるにもかかわらず、誤って自己所有の不動産CをYに売却する旨の申込みをし、YはXの申込みを承諾した。この場合において、民法上、XのYに対する当該申込みに重大な過失があったときは、Xは、Yに対し、当該売買の無効を主張することができない。

③ Xは、Yに騙されて、自己所有の不動産DをYに売却し、その登記をYに移転した。その後、Yが、当該事情を知っている第三者Zに不動産Dを売却した後に、Xは、Yとの間の売買契約を取り消した。この場合、民法上、Xは、Zに対し、この取消しを主張することができない。

④ 株式会社であるXは、消費者であるYとの間で、Xの商品EをYに売却する旨の電子消費者契約(注)を締結した。Yは、当該契約の締結に際し、重大な過失により、商品Eを1個購入する意思であったのに商品Eを11 個購入する旨の申込みの意思表示をしたとして、Xに対し、錯誤を理由に申込みの意思表示の無効を主張した。この場合において、Xが、当該申込みの意思表示に際して、電磁的方法によりその映像面を介して、Yの申込みの内容を表示し、そこで訂正する機会を与える画面を設置する等、申込みの意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置を講じていたときは、「民法」並びに「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」上、Xは、Yに対し、Yに重大な過失があったことを理由に、本件契約は無効ではない旨を主張することができる。

(注) 電子消費者契約とは、電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律第2条1項に規定する「電子消費者契約」であり、消費者と事業者との間で電磁的方法により電子計算機の映像面を介して締結される契約であって、事業者又はその委託を受けた者が当該映像面に表示する手続に従って消費者がその使用する電子計算機を用いて送信することによってその申込み又はその承諾の意思表示を行うものをいう。

 

 

【正解】   ③

 

①(○)通謀虚偽表示の無効は善意の第三者には対抗できないが、Zは悪意者であるのでXはXY間の売買契約は無効であることを対抗できる。

②(○)法律行為に錯誤があった場合は無効となるが、表意者に重大な過失があった場合には、自らその無効を主張することができない。

③(×)詐欺による意思表示は、相手方がその詐欺を知っていた場合には取り消すことができる。本問では、Zはその詐欺によるXY間の売買を知っていたのであるから、XはZに対し取消を主張することができる。

④(○)電子消費者契約法では、映像面を介して、申込みの内容を表示し、そこで訂正する機会を与える画面を設置する等、申込みの意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置を講じていたときは、原則として有効な契約となる。

 

 

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2016年07月24日