第三十五問(手形法・電子債権法)

【問題35】

約束手形及び電子記録債権に関する次の①〜④の記述のうち、その内容が適切なものを1つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。なお、本問におけるA、B及びCは、いずれも法人であるものとする。

① Aは、Bに対して、一定の金額を支払うべき旨の単純な約束(以下、本問において「支払約束文句」という。)に加え「商品の受領と引換えに手形金を支払う」旨の記載を付した約束手形を振り出した。この場合、支払約束文句に付加された記載は無効となるが、当該約束手形自体は無効とならない。

② Aは、AのBに対する電子記録債権をCに譲渡する旨をCとの間で合意した。この場合、当該電子記録債権の譲渡は、AとCとの間の合意のみではその効力を生じず、譲渡記録をしなければ、その効力を生じない。

③ Aは、AのBに対する電子記録債権(その発生記録において、電子記録債権法第20 条(抗弁の切断)第1項の規定を適用しない旨の定めが記録されていないものとする。)をCに譲渡した。Bは、当該電子記録債権の原因となった契約をAの債務不履行を理由として解除した後、当該電子記録債権の支払期日において、Cから当該電子記録債権の支払を請求された場合、当該電子記録債権の原因となった契約が解除されたことを主張して、Cの請求を拒むことができる。

④ Aは、Bの詐欺により、Bに対して約束手形を振り出した。Cは、当該事情を知らず、かつ知らないことに過失なく、Bから当該約束手形の裏書譲渡を受けた。Aは、Cから手形金の支払を請求された場合、Bの詐欺を理由とする手形行為取消しの抗弁をもって、Cに対抗することができる。

 

 

 【正解】    ②

 

 

①(×)約束手形には「一定の金額を支払うべき旨の単純なる約束」を記載しなければならず(手形法75条1項2号)、条件を付けて支払う文言は「単純なる約束」に該当しないこととなり、手形自体が無効として扱われる。

②(〇)電子債権の譲渡は、譲渡記録をしなければ、その効力を生じない(電子記録債権法17条)。

③(×)電子記録債務者は、電子記録債権の債権者に当該電子記録債権を譲渡した者に対する人的関係に基づく抗弁をもって当該債権者に対抗することができない。ただし、当該債権者が、当該電子記録債務者を害することを知って当該電子記録債権を取得したときは、この限りでない(電子記録債権法20条1項)。この規定は電子記録債務者が個人(個人事業者である旨の記録がされている者を除く)である場合には適用されない(電子記録債権法20条2項3号)。

④(×)手形により請求を受けたる者は振出人その他所持人の前者に対する人的関係に基づく抗弁をもって所持人に対抗することができない。但し所持人が債務者を害することを知って手形を取得したときは、この限りでない(手形法17条)。

 

 

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2019年11月22日