第三十四問(相殺)

【問題34】

AのBに対する金銭債権を「甲債権」とし、BのAに対する金銭債権を「乙債権」とする。甲債権と乙債権の相殺に関する次の①〜④の記述のうち、民法上、その内容が適切なものを1つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。

① A及びBは、甲債権と乙債権とを相殺しようとする場合、その相手方に対して相殺の意思表示をしなければならないが、その意思表示には、条件又は期限を付することができる。

② 甲債権と乙債権の双方の債務の履行地が異なる場合、A及びBは、甲債権と乙債権とを相殺することができない。

③ 甲債権の弁済期が11 月1日であり、乙債権の弁済期が同年11 月25 日である場合、Aは、同年11 月1日の時点で、乙債権についての期限の利益を放棄して、甲債権と乙債権とを相殺することができる。

④ 甲債権が貸付金債権であり、乙債権が不法行為に基づく損害賠償債権である場合、Aは、甲債権と乙債権とを相殺することができる。

 

 

【正解】   ③

 

 

①(×)相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない(民法506条1項)。

②(×)相殺は、双方の債務の履行地が異なるときであっても、することができる。この場合において、相殺をする当事者は、相手方に対しこれによって生じた損害を賠償しなければならない(民法507条)。

③(〇)Aが自ら期限の利益を放棄することは可能であるため、甲債権の弁済期が到来した時点で相殺することができる。

④(×)債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない(民法509条)。

 (改正後509条)次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。

 一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務

 二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げる者を除く)。

 

 第三十五問へ

2019年11月22日