第三十六問(代理)

 【問題 36】

Aは、その所有する甲土地をBに売却する旨の委任に係る代理権(以下、本問において「本件代理権」という。)をCに付与しようとしている。この場合に関する次の①~④の記述のうち、民法上、その内容が適切でないものを 1 つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。

① Cは、Aから本件代理権を付与され、Aの代理人としてBとの間で甲土地の売買契約を締結した。この場合において、当該売買契約の効力がBの詐欺があったことによって影響を受けるべきときには、その事実の有無は、Cについて決するものとされる。

② Cは、Aから本件代理権を付与されていた一方で、Bからも甲土地の購入について代理権を付与されていた。この場合において、Cが、A及びBの事前の許諾を得ることなく、A及びBの双方の代理人として、甲土地をBに 3,000 万円で売却する旨の契約を締結したときは、Cの当該行為は無権代理行為となる。

③ Cは、Aから本件代理権を付与されていなかったのに、Aの代理人と称してBとの間で甲土地の売買契約を締結した。この場合、Bは、Aに対して相当の期間を定めて当該売買契約を追認するか否かを催告することができる。

④ Cは、Aから本件代理権を付与されていなかったのに、Aの代理人と称してBとの間で甲土地の売買契約を締結した。この場合、Bは、当該売買契約締結時点において、Cに代理権がないことを知っていたときであっても、Aが追認をしない間は、当該売買契約を取り消すことができる。

 

 

【正解】   ④

 

 

 

①(〇)代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする(民法101条1項)。

②(〇)同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない(民法108条1項)。

③(〇)代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない(民法113条1項)。この場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす(民法114条)。

④(×)代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない(民法115条)。

 

 

 

 

 

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2022年12月12日