北極の未来



 今回の航海もあとわずかとなったディナーの時間、エクスペディションスタッフのリーダー、アニーさんが一緒のテーブルに着いてくれました。アニーさんはホッキョクグマの生態に詳しい人で、講座も受け持っています。



 その席でアニーさんにホッキョクグマの保護について質問しました。
 絶滅が心配されるクマに冬季の間だけでも餌を用意し保護することはできないのか?
 その答えはノーでした。自然に生きるクマは自分の力で生き残らなくてはならないそうです。地球温暖化で海が凍らないなど、こんなに自然を人間が壊(こわ)してしまっているのに・・・。捕鯨などこんなに人間がクジラたちを少なくしてしまっているのに。





 私達にできることはできることはないのですか?
 (この様子を知った私達は)プラスチックを捨てないなど小さな事からやっていかなければいけません。



 私は焦りにも似た気持ちを持ちました。この状況を一人でも多く知ってもらい、環境を守っていこうと考える仲間を増やすことが大切なんだと思います。また環境を大切にしていける国のリーダーを応援することもひとつの方法なんだと思いました。

 
 資料の中にこんな文がありました。
 「人の活動の少ない地域であり、環境汚染とは縁の無い地域と思われていたが、近年の調査によるとアザラシやホッキョクグマなど北極圏に生息する野生動物からも水銀、カドミウムなどが検出されている。」



 また、ホッキョクグマとその生態環境を守る活動をしているアメリカのNPO団体「ポーラベアーズ・インターナショナル」の方が乗船しており、講座の中でホッキョクグマの実態とその活動の紹介をし協力を求めていました。
 私達も北極の地に生きる動物たちと同じ生態学の中にいることを忘れてはならないという言葉が印象に残りました。
「いつか人にも同じことがおこる」私達が
忘れてはいけないことですね。
 
       

     
                        
2019(R1).6  NO.7

   極北の花

 スピッツベルゲン島の南部に回った船はフィヨルド内のイスビョルンハムナという場所に停船、上陸しました。日差しもあり、かなり暖かい場所なので上着のパルカを脱いで、インナーのダウンだけで歩けました。



 氷河に向かって歩いて行く途中には満開の花が咲いていました。極地の花たちは10月~5月の間、雪と氷の下に眠っています。6月頃の雪解けとともに新芽を吹き、花を咲かせます。



 その花々は一様に背が低く、岩の間や岩に張りついているようなところから、環境の厳しさが感じられます。


 
 またブルボンハムナという上陸地点では風があり寒かったのですが、ツンドラの大地が春を迎え、湿地帯のようになったところを歩きました。そこには生き残ることができなかった若いホッキョクグマの遺骸(いがい)がありました。



 またここには1600年頃からの捕鯨により、海岸にうち捨てられたシロイルカの骨が散乱していました。胸の痛む光景が続きます。



 ツンドラの大地は今、咲こうとしている花たちでいっぱいです。歩くときにはその花をよけて歩くのですが、たくさんありすぎてぎこちない歩きになってしまい疲れました。
(-_-;)



 そしてそのツンドラの大地をホッキョクギツネが走って行きました。思わず「頑張って生きていけよ!」そんなふうに声をかけずにはいられない気持ちでした