
2016(H28).1 No.2
一つの氷山が通り過ぎるとその後は次々と氷山が現れすれ違っていきます。形や大きさはそれぞれで一つとして同じものはありません。暗くなる頃には海氷と呼ばれる海水が凍って作られた氷や氷山が溶けて小さくなった氷が数多く見られるようになり、なんとその上にはアザラシが寝ているではありませんか。初めて出会う南極の動物に大興奮です。ペンギンもいました。来たんだ!南極へ来たんだ!
その日は暗くなってしまったため船内に入りました。白夜ではないのですね。その夜は翌朝が楽しみでなかなか寝付かれませんでした。

朝目覚めてすぐに船室の丸窓から外を眺めると一面の氷の海でした。あわてて着替えてデッキに出ます。もうすでに多くの人が甲板で写真を撮ったり、氷山を指して話したりしていました。これが南極の海なんだ。寒さも忘れて周囲に見入ってしまいました。
この日は南緯66.5度の南極圏を越えて進みました。ここまで来ると海氷の量が多くなり、船長はこれ以上は危険と判断したようです。南極圏を越えたところでみんなでお祝いをしました。全員がデッキに集まりシャンパンで乾杯です。海の神ポセイドンが現れみんなに儀式を行います。頭に海水をかけ三回まわると銛(もり)のマークが捺されます。みんな本当に楽しそうでした。

船は少し戻りながら半島に近づき、島と島の間に停船しました。60時間かかって来たのです。南極へ!

氷山に出会えた!
ぎしっ ぎしっ 船室では部屋のきしむ音が一定のリズムで聞こえてきます。朝も昼も夜も。すでにウシュアイアを出港してから2日経ちました。実はこの南極へ来る前に長い船旅を想定して、船に慣れる訓練として小笠原の父島に行きました。
乗船した「おがさわら丸」は東京港から25時間の船旅でした。2等船室を選んだためここでもエンジン音をずっと聞いていたのです。船はあまり揺れなかったのですが、それでも波の上を進んでいるという感覚がありました。酔うことはありませんでしたが、慣れるのには時間がかかった気がします。ドレーク海峡はそれに比べて波がとても高く、船首では飛び散った波しぶきが甲板を洗うような状況です。これでも海の荒れ方はひどい時の半分だと言うことでした。

1日目はこれから南極で過ごすためのレクチャーが予定されていましたが、船が揺れるため船酔いになった人も多く中止となりました。夕方出港し、夕食はまだ外海に出ていなかったため静かな海で食べられたのですが、翌朝はずいぶん揺れるため朝食に出てきたのはツアー7人のうち2人だけでした。昼食も同様です。その日の夕食には多くの人が出てきたのですが、翌日の昼まで席に着けない人もいました。
2日目の夕方になると海の様子が変わりました。雲が低く暗い海の遠くにぽつんと白っぽいものが見えたのです。船員が指で示します。氷山でした。でもあまりに小さいので感動もありません。船は同じペースで進みます。次第に氷山は近づいてきました。その形がはっきりとしてくるにつれワクワクした気持ちになってきました。とがった峰がいくつも飛び出ている王冠のような形です。数キロ離れているというのにとても大きくこれが氷山なんだと感心しました。海の中にはこの3倍の堆積が沈んでいるんだと考えると、大きさが少し怖い気もしました。
南極到着 