海氷上を歩く姿





 ホッキョクグマはこのスバールバル諸島全域で2000頭ほどが生息しています。日本の九州と四国を合わせたぐらいの範囲なので、出会えたことはとても幸運でした。体重は200kgから600kgにもなるというホッキョクグマが氷の上を歩いている姿は迫力がありました。
 途中立ち止まり臭(にお)いをかいでいます。氷の下のアザラシの臭いをかぎ分ける能力があるそうです。とても素敵な姿でした。

ホッキョクグマの姿  

 ふと見ると近くをベルーガ(シロイルカ)が泳いでいるではありませんか。ベルーガはクジラの仲間で、時にはクマに襲(おそ)われることもあるそうです。でも、まるでクマをからかうように近くを群れで泳いでいきます。



 このホッキョクグマたちは海氷の少なくなっていくこの時期から再び凍り始める冬の時期までの3ヶ月間、餌(えさ)となるアザラシが捕れず何も食べないで過ごすこともあるそうです。凍らない期間が長くなれば生き残ることも難(むずか)しくなるかも知れません。
 悲惨(ひさん)なほどやせたホッキョクグマの映像がテレビのニュースで流れ衝撃(しょうげき)を受けたのも最近でした。また人間の村に集団で現れ、ゴミをあさる姿がニュースにも流れました。野生のクマが鳥の卵や海藻(かいそう)も食べるなど、今後は生活が変わっていくこともあると心配されています。



 やがてホッキョクグマはゆっくり離れていき、船も針路を変更して次の目的地に向かい始めました。大きなショーが終わったようで立ち去る姿がとても名残(なごり)おしかったです。



 次は何を見られるんだろうとわくわくした気持ちになりましたが、もう就寝(しゅうしん)時間になるのでした。白夜は時間を忘れさせてしまいます。部屋の丸窓からもれる明るい光を感じながらいつの間にか眠ってしまいました。
 
       

    
                        
2019(R1).6  NO.3

  Poler Bear 発見
  (ホッキョクグマ)


 港を出航したオーシャンアドベンチャラー号はフィヨルドの奥へ進んでいきます。内海なので波はほとんど無く静かな航海です。



 氷河に削(けず)られた岩肌がむき出しになった山々の間を奥へ奥へと進んでいきます。次第に雪と氷の量が増えてきています。



 夕食の時間になりました。食事はすべて船のレストランで食べます。天気も良く波も静かで前菜(ぜんさい)からデザートまでの美味しい夕食をウエイターの皆さんが運んでくれます。飲み物も自由に注文できて、ちょっと贅沢(ぜいたく)な気分になりました。



 夕食後、私は素敵な外の風景をデッキで眺(なが)めていました。その時、船内放送でホッキョクグマが前方の氷の上にいると知らせてくれました。放送は英語と日本語、中国語でアナウンスされます。私はすぐに双眼鏡で確認しましたがまだ距離が遠いため小さな点だけが見られました。



 船はホッキョクグマを刺激しないようにゆっくり近寄っていきます。すると肉眼でも氷の淵(ふち)を歩いている姿が確認できました。自然の中で生活しているホッキョクグマに出会えたことで本当に興奮(こうふん)しました。回りにいる人達も一斉(いっせい)にカメラを向けています。



 この風景の中で出会うためにここに来たのです。夢中でシャッターを切りました。