2006(H18).8 NO.4




 しかし氷河が印象に強く残ったのはそれだけではなかったのです。実はその氷河はあと100年で消えて無くなってしまうとの観測があるのです。ガイドの方が毎年1年間に50m近く氷河がとけて後退していると話してくれました。それを聞いて思わず計算してしまいました。10年間で500m、100年間で5000m。でももっと氷河は大きいのにと考えていると、その進行速度は年々速くなっているとの説明です。



 確かに私の行った季節は夏ですし、快晴の天気でした。しかし3000mを越えた場所にしては本当に暖かいのです。上着でさえいらないぐらいの暖かさを感じると「あと100年」という言葉が重く心にのしかかってきました。本当に地球温暖化は進んでいるんだという気がします。
 目の前に広がる氷河に再び目をやると、確かに氷河の終点近くには以前そこに氷河があったのだと思える場所、つい最近氷が溶けて無くなったのだと思える灰色の岩肌が長く続いていました。その日、私は感動と同時に寂しさにも似た複雑な気持ちで一日を過ごしたのでした。



 その後、一駅下った駅で下車しそこからはハイキングとなりました。感動した山々の裾野を歩くことができる嬉しさでいっぱいでした。私は列の一番最後でゆっくり歩きました。出来るだけこの時間を長く過ごしたいと思ったからです。素敵な時間でした。



 その日の夕暮れ時にツェルマットの村を散策しました。村を流れる川に架かる橋からは雄大な姿のマッターホルンが浮かび上がり圧倒されました。いつまでもその場にいたいと思いました。



       

     



 
 氷河特急の終点がツェルマットでした。ツェルマット駅前には電気自動車しか入れないとのことで環境に配慮した観光地となっています。たしかに訪れる人の数や小さな町の狭い道路では当たり前なのかも知れません。



 翌日ゴルナーグラート鉄道に乗って山頂駅の展望台まで行きました。登る途中からもマッターホルンは見えていましたが、展望台から見るマッターホルン、そして何よりゴルナー氷河とのパノラマはただただ感動しました。





 この素晴らしい世界を見るためにここに来たのです。マッターホルンの斧(おの)のようにとがって重量感のある存在や人を寄せ付けない迫力のある氷壁は印象に残りました。また氷河の大きさ迫力は私の心をとらえて離しません。その氷河に見られる数千年の悠久(ゆうきゅう)の流れが目の前に繰り広げられている様はただ感動で言葉もありませんでした。