第一問(民法条文)

【問 1】次の記述のうち、民法の条文に規定されているものはどれか。

1 債務の不履行に基づく人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する旨

2 事業のために負担した貸金債務を主たる債務とする保証契約は、保証人になろうとする者が、契約締結の日の前1カ月以内に作成された公正証書で保証債務を履行する意思を表示していなければ無効となる旨。

3 併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる旨。

4 債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める旨

 

 

 

【正解】  4

最近の試験ではよく出題されている条文問題。このような問題はほぼ「埋没問題」となりますので、深追いせずサッサと切り上げて次の問題にいきましょう。

 

【解説】

1(×) 債務不履行による損害賠償請求権の消滅時効は一般の債権と同様、「10年間行使しないとき」は消滅する(民法167条1項)。一方、不法行為による損害賠償請求権の場合、不法行為の時から20年を経過したときは時効によって消滅する(民法724条)。このあたりを混同してしまい、非常に難しい選択肢となっていますが、民法の条文にはこのような規定はないので本肢は誤り。

2(×) 保証契約は、書面でしなければその効力を生じない(民法446条2項)との条文はありますが、公正証書の作成までは求められていません。

3(×) 併存的債務引受とは原債務者はそのまま債務者のまま、新たに別の引受人が債務を引き受けることをいい、重畳的債務引受とも呼ばれます。債務引受については現行の民法に条文は存在しません。(改正案では新たな条文の新設が議論されているようです。)よって本肢は誤り。実際には債権者と引受人との契約で何ら問題ないので、いわゆる引っ掛けの肢なのでしょう。

4(○) 債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償責任及びその額を定める(民法418条) 、過失相殺といわれる条文でした。一方で、賠償額の予定を定めた場合には、裁判所はその額を増減できない(民法420条1項)ので、併せて覚えておいてください。

 

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2016年03月19日