今度は車を降りてもはっきり見えます。普通の猫よりも大きめでした。光を当てると黒っぽい灰色の身体の胸に筋が見えます。目は金色にひかり耳がぴんと立っています。写真を撮るチャンスです。ところが私の持っている一眼レフカメラが昼のツアーでの湿気で動きません。こんな時に故障?あわててデジカメで撮影しましたが少し暗くがっかりでした。写真はあとで平野君からいただいた方がより鮮明でした。でもイリオモテヤマネコに会うことができたことで本当に興奮しました。
 帰り道、中山さんは道路上に出てきてしまった大きなヤドカリやカニを発見するたびに車を止め、道路脇に逃がしてあげます。こうして自然を守りながら西表島の観光が盛んになるように努力しているのですね。とても感心しました。西表島の自然のすごさはこんなにもたくさんの生き物と出会えることです。いつまでもこの自然の姿が残ってくれるといいですね。

  

 翌日は西表ジャングル探検隊山口さんの案内でピナイサーラの滝へカヌーで行きました。降りてから滝までの歩きは大変でしたが、マングローブの森やサキシマスオウノキの板根、ミナミトビハゼなど西表島ならではの自然を観察できました。沖縄県最高の落差をもつ滝は絶壁から勢いよく下に落ちます。滝壺で泳いで爽やかになりました。午後は平野君の新造船で船でしか行けない船浮(ふなうき)地区を散策しました。偶然ヤシガニを発見し、西表島の自然の多様さに感動しました。
 その夜、平野君の友人も交えて4人での夕食は楽しく美味しい料理でした。彼は今年、現在住んでいる白浜(しらはま)地区でカヌーを案内してくれた山口さんとともにお祭りの事前準備や舞台責任者を務めたそうです。祭りのリーダーを務めるためにはその地区の住民の信頼を得ると同時に、活動団体との調整をしっかりやれる実力が無くてはなりません。昼食に寄った食堂で「お祭りお疲れ様でした」と店の方に声をかけられていました。誠実な彼が西表島でしっかり根付いていることを深く感じました。自分の店を持ちやっていくことは大変でしょうが、頑張って欲しいと願いました。

平野君のお店です。ダイビング
  遊びなーら(あしびなーら)

中山さんのツアーです。
   ナイトツアー
  Z Resort(ジーリゾート)

山口さんのお店です。
   ジャングルツアー
  西表ジャングル探検隊 

     
リオモテヤマネコ
      に会う!

 西表島では特別天然記念物のカンムリワシとイリオモテヤマネコが有名です。天然記念物にはセマルハコガメ、キシノウエトカゲ、サキシマハブがいます。この日、由布島への移動の最中にカンムリワシとセマルハコガメを見ることができました。カンムリワシは電線にとまっているしセマルハコガメは道路横の駐車スペースを歩いているのです。車に気をつけてね。一旦ホテルに戻った私達は夜を待ちます。西表島でのナイトツアーに参加するためです。
 8時にZ Resort(ジーリゾート)の中山さんが迎えに来てくれました。中山さんはもっとも遭遇率(そうぐうりつ)の高いガイドさんということで平野君が連絡を取ってくれた方です。ツアー参加は私達3名だけです。ハブもいるので長靴を履(は)いて出発です。車でイリオモテヤマネコに遭遇しやすい場所まで移動します。車内ではワクワクドキドキです。途中に小さな生き物が道路上に出てきています。車はそれをよけながら進みます。途中で私が道路脇で動くものを発見しました。確認するとなんとイリオモテヤマネコです。ヤマネコはすぐに茂みに入ってしまい車を降りた時にははっきりした姿は確認できませんでした。しばらく待ったのですがその後は出てくることはありませんでした。

 イリオモテヤマネコの発見は1965年です。絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)に指定されており100匹程度の生息数で減少しているとのことでした。その減少の理由の一つに交通事故があるそうです。今回発見したヤマネコには子供がいたそうですが交通事故で死んでしまったとの話でした。悲しいですね。私達は車を降りて山の中や田圃(たんぼ)などをさがしました。その最中小川の中をライトで照らした時です。ヘビを発見しました。サキシマハブです。奄美(あまみ)のハブに比べ毒性は低いとのことですが、咬(か)まれれば大変です。どきどきしました。
 夜の草むらを歩くことはちょっと冒険です。カエルが飛び出したり、何かの鳴き声が聞こえます。草むらにぼんやりと光るものを発見しました。蛍(ほたる)の幼虫のようでした。いつヤマネコに出会えるかと本当に楽しかったです。残念ですが発見できなかったため帰ろうと車を走らせている時です。中山さんが道路脇で発見しました。イリオモテヤマネコです。

  

         
 由布島と水牛車

 翌日の朝平野君が迎えに来てくれてツアーが始まりました。初めに浦内(うらうち)川を船で遡行(そこう)し、マリュードの滝、カンピレー滝に行くコースです。亜熱帯自然林の中を40分程歩きましたが、蒸し暑い中でのことで汗びっしょりでした。途中には珍しい植物や蝶(ちょう)などが見られました。カンピレー滝に着いた時、風が爽(さわ)やかで疲れた身体が癒(い)やされました。帰る船を1本遅らせてもらいゆっくりできました。
  
 午後は由布島(ゆふじま)に行きました。由布島は浅い海を水牛車で渡ることで有名です。むかし西表島はマラリアの発生がひどく、移住した人や戦争で疎開(そかい)した人のほとんどが罹患(りかん)して命の危険にさらされました。また稲作ができない竹富島の人々は西表島に通って稲作を行ったのですが、マラリアの心配のため来た時には発生が少ない由布島に泊まったそうです。反面マラリアのため西表島の開発が遅れたことで自然が残ったということもありました。1961年には八重山(やえやま)諸島のマラリアは根絶され安心して暮らせるようになりました。
 しかしこの由布島にも悲しい出来事がありました。1969年の台風で由布島に大きな被害が出たのです。人々は西表島に移住し由布島には一組の夫婦だけが残りました。その夫婦はみんなが島に帰ってくるのを期待してたくさんの木や草を植え続けていったそうです。その結果、現在では沖縄本島では見ることのできない熱帯性の植物が繁り多くの動物が残ったそうです。
 由布島に渡る水牛車では沖縄の民謡が三線を伴奏に歌われ、ゆったりした気分で楽しかったです。由布島では珍しいものを見ました。さがり花とオオゴマダラ蝶の黄金のさなぎです。どちらも本当に素敵でした。西表島に戻る水牛車では水牛が自分で引き場所に入って行くのを見て感心しました。えらい!

      
                        
   H29(2017).6

 西表島へ行こう!

 平成25年(2013)6月私は小笠原父島に行きました。南極への準備旅行でもあったのですが、もう一つ自分の教え子の平野君が父島でダイビングのインストラクターを行っているので会いに行くという目的もありました。しかしこちらの計画が決まったときには彼は父島を離れてしまっていることが分かったのです。とても残念でした。その後彼は沖縄の西表島に移り、そこでダイビング店を立ち上げようとしていました。そのことを知った私は良いきっかけなので西表島に行くことを計画したのです。
 妻に相談したところ行くならばイリオモテヤマネコを見るツアーがあるのでぜひ計画に加えて欲しいとのことでした。私はそうか西表島にはイリオモテヤマネコがいるんだとあらためて思いました。私は自然大好きなのでそのツアーはぜひ計画に入れようと思い、今度は事前に西表島にいる平野君に相談しました。すると彼は西表島での計画を本当に熱心に検討してくれ、3泊4日の計画がしっかりできあがりました。

 平成29年6月私達は石垣島に到着しました。天気予報ではあまり良くないとのことで雨も覚悟していたのですが降りませんでした。しかし蒸(む)し暑く南国の情緒を感じることができます。飛行機から見た珊瑚礁(さんごしょう)が本当にきれいで素敵でした。午後西表島に渡る計画なのでレンタカーを借りました。今日は石垣島を見学します。私は初めてなので定番のコースです。鍾乳洞(しょうにゅうどう)、やいま村、川平湾(かびらわん)のグラスボートでは海亀を発見しました。
  
3時頃離島ターミナルの具志堅用高さんの像に見送られて西表島に向かいました。1時間ほどの航海ですが海は静かで船はスピードをあげて走ります。ふと目を覚ますともう西表島でした。この日はホテルニラカナイに入り南国ムードを楽しみました。