珈琲を抽出している時のおじさんはお客さんが来ても対応しません。お勘定お願いしますと言われても1分待っていて下さい。と抽出に専念しています。本当に珈琲を淹れるのに全力を注いでいるのが分かります。
一段落した時、私が珈琲が好きだと話すとおじさんは私達のそばに座り珈琲について語り始めました。その時はブラジルコーヒーの話でした。ブラジルのコーヒー豆の生産量は世界一で世界の生産量の3分の1もあるそうです。収穫された豆は天日乾燥されることが多く品質も良いとのことでした。また豆を焙煎する技術も熱意を持って話してくれ、焙煎時間は何分が最もいいなどと力説してくれました。抽出についてもお湯の温度やお湯の注ぎ方など本当に熱心です。私達は笑顔で聞き役となっていました。

帰り道なんだか嬉しいやら可笑しいやら思い出し笑いをしてしまう私でした。自分でもコーヒーを焙煎してみようかなとその時初めて思いました。
その2週間後です。私は家庭用焙煎機を買ってしまいました。届いた日よし!やるぞ!と気合いを入れて初めての焙煎に挑戦しました。熱風吹き上げ式の焙煎機は吹き上げることで豆が交替しながら焼き上がっていく仕組みです。すごい音でした。ぢろばたのおじさんが言っていた時間をきっちりやってみると煙がもうもうと立ちのぼりあわてました。そして仕上がったコーヒーは真っ黒なコーヒーとなり、試しに飲んでみましたが・・。
その日から私の挑戦が始まりました。2ヶ月後やっと家族も飲んでくれるコーヒーとなりました。翌年再度ぢろばたを訪ね美味しいコーヒーをいただきながらその話をしました。おじさんは笑顔で聞いてくれアドバイスもしてくれました。仲間が増えたことを喜んでくれたようです。おじさんのコーヒーには到底追いつけないけど自分が満足できるコーヒーを目指してやっていこうと思いました。
現在は焙煎機も2代目となり最初調整に時間がかかりましたが、毎日美味しいコーヒーをいただいています。ぢろばたに行くには3時間ぐらいかかるのですが、その後も時々行っておじさんと話すことを楽しみにしています。
H24(2012).10
珈琲との出会い その2
ぢろばたのおじさん
平成19年(2007)9月まだ早い秋を見つけに秩父にドライブに行きました。この日は雨で少し寒かったです。まだ秋を感じるには早すぎましたが立ち寄った三峯神社は霧がかかり神秘的な雰囲気を醸(かも)していました。
そのドライブの途中で秩父駅付近に行ったとき「珈琲道ぢろばた」という喫茶店に入りました。蔦に覆(おお)われたこぢんまりとした店は私の好きな雰囲気でした。入ってみるとテーブルは2~3席しか無く木製のイスとテーブル、周囲の家具もアンティークの良さがにじみ出ていました。
お客さんは私達二人だけでした。席に座るとテーブルに何か貼ってあります。
「 お菓子軽食などの持ち込み
珈琲の抽出に専念しますと他のメニュー(例えばトースト)に気が入りません。そんな理由で当店は珈琲のみです。お客様好みのお菓子類などご自由にご持参下さい」
と書かれていました。私は思わず嬉しくなってしまいました。こんなにも珈琲を丁寧に淹れてくれるんだと思うと出てくる珈琲が楽しみでした。おじさんが注文を聞きに来ました。二人で同じものをと考えていると、おじさんは「別々に注文して交換して飲むと二つの味が味わえますよ」と勧めてくれます。
別な種類にしたら面倒だろうとも思いますが私達は勧めに従いました。珈琲を淹れる時間はかかりましたが、楽しみに待っていると一つだけ出てきました。次にもう一つに取りかかるそうです。二つの珈琲を淹れ終わると私達はそれぞれを交換して飲みました。本当に美味しい優しい味でした。

