釣りは広がる

  この日の経験は私に釣人の自覚をもたらしたように思います。川に入る服装、タモや違う長さの竿、糸の種類、針の種類、各種の餌いろいろな場面を想定しながら準備をし、釣りに行くようになりました。芦ノ湖、山中湖での「わかさぎ」、西湖での「ひめます」と「ヘラブナ」、川での友釣りによる「あゆ」と釣りの種類も広がっていきました。

  

 ある日先輩の先生が芦ノ湖でトローリングの釣りをするので連れて行っていってもらいました。エンジン付きボートで糸を引きます。その時私の竿にあたりがありました。引いてみると離れた場所で大きな魚がジャンプをしています。ビックリしました。だんだん寄せていき先輩が大きなタモですくうとなんと65cmを越えるニジマスだったのです。その後これ以上のサイズには出会ったことがありません。

  

 海釣りにも行きました。早朝に出かけ海岸から遠くへおもりと餌を付けた針を投げ入れる釣りです。このときは「きす」が釣れました。また釣船で沖に出て100mを越える海底にいる「あじ」「さば」「かわはぎ」などを狙ったこともあります。さすがに深い場所から引き上げるため電動のリールを買って臨みました。数も多く釣れ嬉しかったのですが、船長が指定する場所で餌を付けては降ろし、かかると引き上げるの繰り返しは自分には合わなかった気がします。
 私が特に気に入ったのは渓流釣りでした。川の上流の山の中で釣ることはとても自然が近く楽しかったです。水もきれいな川でしたが渡るときや釣るときには危険もありました。でも岩陰やゆるい流れなど自分で決めたポイントで釣れた「やまめ」や「いわな」は本当に嬉しかったです。私がよく行ったのは世附川という西丹沢の奥深い沢でした。車を置いて1時間近く歩かないと良い釣り場になりません。いつも一人で川を釣り上がり、気がつくと4時頃になっていて薄暗くなっていく山道を帰ってきたこともありました。
 

 釣りから街道歩きへ

 一人で渓流に入るときには危険もあります。何かあって人に迷惑を掛けることは絶対にあってはいけないと思いました。それには経験と体力が必要です。私は10年以上釣りを続けてきたことで装備、服装、場所、行動など危険をさける知識は身についてきたように思います。あとは体力作りが日常の中でも必要と思いました。
 そこでやろうと思ったのが長い距離を歩く練習です。大学生のワンゲル時代にも長い距離を歩く訓練はしていたので再び取り組むことにしました。そして始まったのが町歩きです。1日に20kmぐらいを目標として歩いていたのですが、それはだんだん本格的な街道歩きとなりました。街道歩きは私の新しい趣味となり最近では東海道を日本橋へ向かって楽しみながら歩いているのでした。



       
                        
   H16(2004).5

   自己紹介

 教員となって10年目頃のことだと思います。4月新しい学級がスタートすると自己紹介の時間を設けます。その時に子供達に紹介してもらう内容の一つに「趣味」という項目がありました。自分を知ってもらう一つとしてどのような趣味を持っているか話してもらい、同じ趣味の人がいれば友達になるきっかけとなると考えたからです。
 読書や音楽、部活とか子供達の自己紹介を聞きながら、自分の趣味は何だろうと考えました。最後に自分も自己紹介をするのですがいつも映画を見ること、旅行をすることと話していたように思います。
 でもよく考えてみると最近映画はテレビの番組表で偶然見つけた西部劇や未来を描いたSFものをときどき見るだけになっていました。旅行も学校職員で行く旅行だけになっているのです。学校と部活の時間がその大半を占めているので本当の趣味というものがなくなっているのではないかという不安な気持ちにもなりました。

 趣味のスタート

 そこで私はあらためて趣味を作ろうと考えました。何をしようか考えるのもおかしなことなのですがその時は真剣でした。そこで子供の頃やったことのある釣りをやろうと決めて早速釣り竿と糸、浮き、針、おもりを購入しました。安物ばかりの仕掛けでしたが早速近くの中津川へ行き久しぶりに釣りに挑戦しました。
 餌はソーセージです。はだしで川に入り糸を垂らしてみるとなつかしい感触がよみがえります。でも釣れません。しばらくして餌が大きすぎることに気がつきました。小さくしてみると小さい魚がかかりました。とても嬉しかったです。この日初めて釣った魚は「はや」でした。

  

 その後学校がテストで早く終了して部活のない日や休日の部活終了後に1,2時間だけ川に行くようになりました。「おいかわ」も釣れました。もっと上流にはどんな魚がいるんだろうと場所も変えていきました。
 早戸川に行ったときのことです。突然すごい引きに出会いました。今までに無い強さです。しばらく魚は逃げ回りやっと水面に顔を出すまで上がってきました。しかし私はタモという捕獲網を持っていませんでした。そのため川岸に引き上げるしかなく少しづつ岸に寄せるようにしていきました。最後に今だと思って引き上げたところ35cmを越える「にじます」でした。岸で暴れているので手でつかまえようとした瞬間に糸が切れ、にじますは川に消えていったのでした。その後その日は何度糸を入れても魚はかかりませんでした。