2度目は五色ヶ原の湿地帯でキャンプした夜のことです。みんなが寝静まっているテントにクマザサをかき分けて近づいてくる物音が聞こえました。それに気づいた私ともう一人の3年生は思わず枕元に置いておいたナタを握りしめました。息づかいまで聞こえてくるような緊張感の中でその音は止まりました。
 5mぐらいだろうか。心臓がどきどき飛び出しそうでした。しかしその音はそれ以上は近づかず、やがて離れていきました。ほっとしたと同時に身体中汗でびっしょりになっていました。ものすごい緊張感のあった2度目の遭遇でした。

 3度目は忠別岳を過ぎて少し下ったところで道が分かりづらくなっていました。そこで私ともう一人の3年生で偵察に行ったときのことです。少し下ったところで道が違うことが分かり本隊にはまっすぐ先に行くように合図をして二人で追いかけましたが、私達はええい面倒だと斜めに這松(はいまつ)帯を横切っていくことにしました。
 すると途中にあった雪渓に爪でひっかいたような後を見つけてどきりとしました。周囲を見回すと近くに大きな熊の糞が山盛りになっていました。熊のテリトリーに入ってしまった・・・。私達は急に不安になり大声で仲間を呼びながら這松帯をかけるように抜けていきました。

 その夜、白雲岳のキャンプ場でほっとした夜を迎えていると、テントの外でまた音がするではありませんか。恐る恐る外に懐中電灯の光を当ててみるとナキウサギの目が光っていました。

   


 この合宿の時には、はっきりと近くに熊がいたことを感じました。北海道の自然のすごさだと思います。




       
                        
   H12(2000).10

 熊はすぐそばに

 平成12年(2000年)夏に家族で北海道を旅行しました。層雲峡近くのビジターセンターに寄ったときにヒグマの剥製(はくせい)がありました。大きくてとても迫力がありました。そのとき私は学生時代に北海道の山に登り、熊と遭遇したことを思い出しました。

  

 それは大学3年生の夏合宿のことでした。山行を計画しているとき私達はヒグマの生態や被害、出会ってしまったときの対処など実際に現地に調査に行って確認しました。熊に襲われた人の写真なども見ましたが、恐ろしさを感じました。現地では熊の出没は頻繁にあるので食べ物を絶対に残さないようにと地元の人に注意を受けたのでした。

 昭和51年、夏合宿大雪山パーティーの1日目の宿泊地は十勝三股の音更川(おとふけがわ)が支流と合流した川原でした。キャンプ地に着くやいなやすぐに夕食の支度にかかったのですが、肉をザックから出して鍋を洗いに行っている間にその肉をカラスに持って行かれてしまったのです。先が思いやられる初日でした。翌日朝食の支度で川に近づいてみるとそこには昨日無かった熊の足跡がありました。みんな急に無言になって早々と川から離れました。