こんな話の代表は傘です。校内に忘れ物の傘が50本ほどまとめてありました。いつまでもそのままの状態なので早く生徒に自分の傘を発見してもらいたいと昇降口の生徒の目に触れる場所に陳列(ちんれつ)しました。けれど誰も見向きもしません。ところが数日後、昼間急に雨が降った日の放課後、見事にこれらの傘はなくなっていました。実際に私の学校であった話です。
自他の区別をつけない子供というのは2位「注意されると他の子もそうだと言って注意を聞かない子」とダブってきます。まとめには「自己中心的ですが、他人への依存性も強く思いやりに欠ける様子が見られて、このままでは社会がなりたつのか心配になります」となっていました。以前は「人の迷惑になることはするな」「世の中にはお金で買えない大切な物がある」「社会に役立つための勉強だ」などの大人が子供達に諭(さと)す言葉も多かったと思います。今はこのような言葉がなくなってしまったのでしょうか。
この子供達の姿から私達大人は自分達の姿を振り返ることが必要になっていると思います。子供達は近くにいる大人を必ず手本にしているからです。社会生活が成り立たないような未来は、子供達にとっても私達にとってもつらい日々となることでしょう。将来子供達が明るく楽しい生活をする上でも今子供に何を教えるのかを考えていくことが必要でしょう。
H2(1990).7
気になる子供達
近年学校における子供達の様子を見て首をかしげたくなる行動が多く見られるようになった気がします。
以前、埼玉県で小学校の教師を対象にしたアンケートが行われました。「気になる子供達の行動は何ですか」という質問です。その答えの1位には「物をなくしても自分からさがさない子がいる」でした。参考に2位には「注意されると他の人もそうだと言って素直に聞けない子がいる」、3位は「上履きをきちんと履けない子がいる」、4位は「落ちている物を踏みつけても気づかない子がいる」、5位は「次の指示をしないと何もしない(できない)子がいる」の順でした。このアンケートの回答の中にはこのような具体例もありました。
小学校の保健室。そこに保健の先生がいても子供は平気で戸棚(とだな)や机の中を開けて物を取り出す。「駄目(だめ)だよ」と先生が怒っても「いいじゃん」と子供に反省の色は全くないという。またある教室。ある子の上履(うわば)きがなくなって困っていたところ、別の子がその子のネーム入りの上履きを履いていることが分かった。しかし彼からは「だって僕の上履きもなくなったんだもん」と反論されたそうです。自他の区別のつかない子供は増えてきているように感じます。