さんざんな教習は学校に着き終了したのですが、その日の段階は合格印がもらえませんでした。翌日私はコースを必死になって覚えてその教官を指名して教習を受けたのです。最初のスタートからどちらも一言も話しません。そして無言のまま学校まで戻ってきて教習を終了する時に私は自慢げに言ったのです。
 「どうです?ちゃんとコースを覚えたでしょう?」すると教官は私を見ることもせず、「あたりまえだ」と言って印をギュッと押したのです。私はしばらくぼんやりとしていましたが、(あたりまえかあ)と急に力が抜けました。怒られたことや、その怒り方が気に入らないと腹を立てていた自分は何だったんだろう。

 私は今でも車で出かける前には地図をじっくり見てコースを頭に入れてから走る習慣があります。その時の教官の強烈な印象が心に焼き付けられているのですね。








       
                        
   S53(1978).6

 自分の行き先は

 私の父は商人でしたので車の免許は早く取り、いつでも働けるようにしておいた方が良いという考えでした。そこで私は高校3年生の夏頃から自動車教習所へ通い始めました。
 父から勧められたことでもありますが、自分も早くから興味を持っていたので4段階の教習課程は順調に進んできました。最後の課程は路上教習ということで自動車学校の外に出て行くのです。

 

 当日私は少し緊張して車へ乗り込みました。教官は毎回替わりますが、今回は少しこわい感じの人でした。「お願いします」と声をかけてスタートしました。自分では車を走らせることは心配が無かったのですが、曲がるところが初めてなので正しいかどうか少し不安でした。
 そのため私は教官に「ここで良かったんですよね?」と確認したのですが教官は無言でした。(なんだよ愛想の無い人だなあ)と私も少しむっとなりました。次の曲がる角に来た時も私は「次で良かったんですよね?」と聞いてしまいました。すると教官は突然怒り出したのです。
「道が分からないなら車なんか乗るな!」
「自分がどこに行くかも知らねえでどうすんだ!」
 私はドッと汗が出てきました。(なんだこの言い方は。このクソおやじ!)そんな気持が胸一杯に広がり頭に血がのぼりました。