木工の”困った”集 その1.
カンナが切れない-Part 3- 「上手く研げない」 |
天然仕上げ砥に吸いついて動かなくなった鉋刃。 しのぎ面が平面に研げている証拠です。 |
<カンナ刃を上手く研げない>の問題解決
「研ぎが7割、技術は3割。 |
◎丸っ刃でも、とりあえず切れるようにしたい。 なれない初心者は手元がぐらぐらするために、どうしても研ぎ面が丸くなって地金と鋼が区別できないようになってしまいます。刃先が厚くなるのですぐ切れなくなるのですが、少しでも長切れさせるためには、しのぎ面をより鋭角に研げばいいいわけです。 ◎手元のグラグラを直す方法。 とにかく練習を積んで指先に感触を覚えさせるしかありません。 買いたての鉋刃はしのぎ面の平面が出ていますから、これで練習しましょう。 利き手だけで刃が研げるくらいにしっかり持って、逆の手の中指で刃先の中央を押さえます。 その中指先でしのぎ面がぴったり砥石に密着するように押さえます。 その姿勢のまま、腕を前後させるのではなく、上体を前後させるような感覚で 前後させます。ストロークはなるべく小さいほうがいいでしょう。 この姿勢のまま刃がえりができるまで研ぎ続けます。 |
注意最初は水を多く。刃がえりが出てきそうな感触があったら砥クソだけで研ぎます。力ももだんだん抜くようにします。そうして研ぐと、地金の部分がグレーになり、刃先の鋼部分は白く光るようになります。それが平面に研げた証拠です。
このあとは、仕上げ砥で表7、裏3くらいの割合で刃を整えれば仕上がりです。 ◎斜め研ぎと正面研ぎ 刃先を真横に構えてまっすぐ前後させる正面研ぎは基本ですが、なれないとぐらついて丸っ刃になりがちです。私は今でも中砥での研ぎは刃の左肩を下げて研ぐ斜め研ぎをしています。このほうが安定感があって平らに研げるようです。 ただし、仕上げ砥で刃を整える段階では正面研ぎをします。 ◎荒仕工鉋と上仕工鉋の研ぎ分け 木を削り減らすのが目的の荒仕工鉋の刃先は少し丸くなっていたほうが都合がよく、仕上げ鉋の刃先は直線に研ぎます。 私は荒仕工鉋用と中・上仕工鉋用に1000番の砥石を2丁用意しています。 荒仕工用の砥石は多少中央がえぐれていたほうが刃先を効率よく丸くできます。 上仕工用の砥石は真平にしておき中仕工と仕上げ鉋以外は研がないようにします。 仕上げ砥も荒仕工用と中・上仕工用に対応させた2丁を用意してあります。 |
砥石の平面を保つ 荒仕工鉋用の砥石は多少中央がえぐれていてもかまいませんが、中・仕上げ鉋用の砥石は常に平面を保つこと。 1000番を2丁用意しておいて(3丁で交互にすり合わせれば完璧です)両方を同じ条件で研いだらすり合わせて凹みを直す。これを続けていけばいつでも平面を保つことができます。 砥石が1丁しかない場合はコンクリートブロックを利用すれば早くおろせます。厚さ10mm程度のガラス板を購入しその上に耐水ペーバーの#80くらいをしいてすり合わせてもいいです。 いったん大きく凹んだ砥石を元に戻すのは大変な労力が要りますから、使った後すぐ直す癖をつけておくことです。 |
◎仕上げ砥について 仕上げ砥だけは天然ものにすべきだと私は勝手に思っています。確かに当たりはずれはあるとは思いますが、私は天然仕上げ砥の吸い付く感じを指が覚えてしまっていますから、キングの5000番、6000番といった人工砥石は目詰まりが早くすべって使いにくいという印象です。 ただしこれは個人差があると思いますし、値段的にも天然砥は高価なので無理をする必要はないかもしれません。 |
◎名倉砥について 名倉砥はおもに天然仕上げ砥の目詰まりをなくしたり砥石面をきれいにする目的で使われます。黒い対馬名倉と白く縞模様の入った三河名倉の2種類がありますが、木工では黒名倉を使います。人工の仕上げ砥を使うときにもこの黒名倉は便利ですので、ひとつ持っておくといいでしょう。 ただしこの黒名倉も天然仕上げ砥も非常に割れやすいので使う面以外は布を巻いてカシュー塗料で固めておく必要があります。 |