《木工を始めたい方へ》


このページは、木工の駆け込み寺です。
これから木工をやろうとしている方、あるいはまだ木工を始めて間もない方が 対象です。

木工の初期段階で、ほとんどの人が体験する問題や壁について、私自身で解決してきた方法をできるだけわかりやすく 解説していきたいと思っています。初心者でも比較的楽に道具を使いこなせるようになる、というのがこのページのみそ。
 ということで、今回よりシリーズでひとつずつ問題を取り上げてまいります。



<木工の”困った”集> その1.

カンナが切れない。

-Part 1-

千代鶴太郎(是秀の息子)作 運寿の鉋 
<出典>  道具曼荼羅/毎日新聞社刊

そうなんです。木工に取り組むとき、最初誰もが経験することがこれ。何しろ、カンナは生きている木でできていますから当然狂います。木工具の中でも一番難いものです。カンナの調整ができない大工さんも多いと聞きます。切れない理由は大体以下のとおりです。 
イ:カンナ台が狂っている 
ロ:刃と裏金が密着していない 
ハ:刃の裏出しができていない 
ニ:裏金の裏出しができていない 
ホ:刃がうまく研げていない・・・・・など   
イ:のカンナ台の問題。これがほとんど。次のロ:〜ホ:は刃と裏金の問題です。 <Part 1>ではその台についてお話します。(刃と裏金については次回のPart 2でご説明します。)

<カンナ台が狂っている>の問題解決 

●手っ取り早いほうがいいという方
はっきり言います。カンナ台の狂いを完璧に治すのはプロでも至難の技です。それでもやってみようという方には後ほど説明しますが、やーめた、という方は、道具屋さんに行って”すぐ使いの2枚刃カンナ”をください、と言って新しいカンナを求めてください。”すぐ使い”というのは、文字通りすぐ使えるように調整されたカンナです。現在お使いカンナが手におえないという方にはお勧めです。(このカンナも、時間がたてば狂ってきますので、念のために。店の中で狂ってしまっていることもあります。) 
●ご自分で現在のカンナを調整してみようという方 
こういう性格の方が木工はゆくゆくうまくなるようです。それはともかく、やり方ですね。 
1.まず、正確な平面の出たものが必要です。できれば1cm厚で30〜40cm四方のガラス板があれば理想です(なければ厚めの窓ガラスでも結構)。それに印鑑の朱肉(2Bくらいの濃い鉛筆の削りかすでも可)を塗りつけてください。 
2.カンナの刃を出るか出ないかすれすれにしてください。そして、朱肉の上を木を削る要領でこすってください。 
3.カンナの下端(刃の出る面)に朱肉がつきます。どこについているかが大事なんです。 刃の手前3ミリ幅程度のところと、台尻〔引くとき手前にくる方が台尻〕に1cm程度朱肉がつくように、他についている部分をノミやヤスリで削り落としてください(多分、何度も何度も削ることになります)。 
このとき、決してサンドペーパーは使わないでください。ペーパーの細かい粒子が台に残り、刃をつぶしてしまいます)。 

これで刃の手前と台尻だけに朱肉がつくようになれば、完成。カンナ台の調整はOKです。あとは刃と裏金の調整がうまくいっていれば、これでみちがえるようにあなたのカンナは切れるようになっているはずです。(これまでのように、刃をたくさん出していると、思わぬ抵抗にあってびっくりする思います。切れるようになれば、刃の出し加減は、わずか髪の毛一本程度の影、カンナが木に吸い付くような感じになります。) 
もしこれで切れなければ、今度は刃と、裏金に問題があります。 それについては、次回のPart 2でご説明します。 

<カンナを使わないときの留意事項> 
●刃を抜いたまましまわないで 
●外気に当てたまま放置しないで 
●湿気の多いところにおかないで 
●直射日光や暖冷房機のそばを避けて
 
カンナは生きている道具。せっかく調整したカンナをできるだけ長持ちさせるためにはカンナ台の変化をできるだけ最小にしておくことです。刃をきつく入れて調整した台を、刃を抜いて保存していれば当然、台は狂います。温度、湿度の変化の少ないところに刃をきちんと入れて保存しておくことが、カンナにはベストなのです。 


※なお、木工のプロは、下端定規(檜の正目板2枚を合わせた直線定規)と、台直しカンナ(刃を直角に仕込んだ小型のものでカンナの下端や堅木を削る専用カンナ)だけで、荒・中・仕上げの3種類のカンナの調整を仕分けます。あなたも慣れてきたら、この方法にトライしてみてください。
(下端定規と木製のケース)

☆今回のテーマでもしわかりにくい点があったり、もっと詳しく知りたい、という方は、
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