A 家を買うのは大変な苦労ですが、同時に大きな夢を手に入れることでもあります。以下に購入までの流れと注意点を書いておきます。
1.希望条件をしぼろう
「白いペンキ塗りの家で芝生の緑がきれいな庭では子供がブランコに乗って遊んで
いる。家の中からはピアノの音が聞こえてくる。」
とまあ、こんなイメージを持つのは一向にかまわないがやはり現実は厳しい。都会で
こんな家で生活することは一般ピープルにはまず無理だ。
ならばある程度妥協した条件でマイホーム実現へ向けて希望をしぼっていくことになる。
これはマイホームを探していく過程である程度しぼれていくものであるが、一つや二つは
妥協しないこだわりも持っておきたいものだ。
「近くに公園がほしい」「静かなところ」
「駅に近い」「絶対南向き」「屋根付駐車場」「断固新築!」などなど人によっては
こだわりがあるだろう。家は高い買い物なので何度も買い換えることができない。買った後で
不満が出てきたときも,「ここにこだわって気に入った家だから」と思えば我慢できるし、精神衛生上もよろしい。
ちなみにこのこだわりが多すぎる人は家を買うことができないまま一生を終えることが多い。
2.頭金を作ろう
現金でポンと家を買ううらやましい人も世の中にはいるが,多くの人はローンを組む。ローンの頭金を作らないと家は
購入できない。この頭金は多ければ多い程良いのだが、なかなか思うように頭金は作れない。
頭金を作るために競馬場に通ったりひったくりに走ったりするのは勝手だが、
元も子もなくしてしまう可能性が高い。やはりこつこつと節約しながらお金を貯めるのが近道だろう。
一つの方法としては親にいくらか援助してもらうという手が考えられる。通常の贈与は
贈与税がどかんとかかるのだが、住宅を購入する場合は特例で大幅な控除がある(平成17年12月31日まで)。
「うちの親の臑(すね)は細いの。他に方法はないの?」などと聞かれても筆者としては困ってしまう。
そんなうまい方法があればどなたかメールでコッソリと教えていただきたい。
3.申込から契約まで
気に入った物件があれば申込書や買付証明書を出すわけだが、ここから先の段取りは
不動産屋のペースとなっていく。それは構わないのだが、大きな山場が契約であることぐらいは知っておきたい。
契約時に不動産業者から買い主へはは重要事項説明書の交付(売買契約締結までに)があり、
売り主と買い主とは売買契約を締結する。手付金の授受もこのときに行われる。
契約時に注意したいのが、売買契約書と重要事項説明書の内容である。
新築マンションの購入なら、事前に見本を見せてくれたりするのだが、中古物件や
建売住宅の購入の場合は契約当日になってはじめて契約書や重要事項説明書を
見せられることが多い。ここはできるならば契約前日までにコピーをもらっておき、
内容を検討しておきたい。理解できない条項については事前に不動産屋に質問しておくぐらいの
ことはしておきたい。少々頭の回転の速い人でも契約時に初めて見せられる書類を
早口で読み合わせながらでは理解しにくい。あいまいな理解で相づちをうって
印鑑を押すのが日本人の悪い癖である。
「契約書をチェックしておかないと悲劇が起こるの?」
と思われるかもしれないが、「本条項を遵守実行できない場合は買い主は胸の肉1ポンドを差し出す」
などと書かれているかもしれない。まあ、これは冗談として,通常は契約書の内容の不理解のせいで
トラブルが起こったということはあまり聞かない。普通に決済・引き渡しまで進行すれば
揉める要素はほとんどないからだ。
ただ、金額の大きい買い物だか
ら,いざ事が起こったときには大変なことになる。軽い気持ちで
押印することは避けたいということだ。
実際に、契約書を交わした後は完全に契約書
の内容にのっとり進行していく。それまではあなたのわがままや無理難題に対してもにこやか
に対応してくれた不動産屋の営業マンもひとたびあなたが契約書に反するようなことを
すれば営業スマイルもどこかへ飛んでしまう。当然あなたも契約書にのっとったペナルティを負うわけだ。
「重要事項説明書」は文字通り重要である」。で、終わってしまうといい加減な不動産屋
と思われそうなのでもう少し書いておこう。
「重要事項説明書」は不動産業者から買い主に交付される書面だが、
当該不動産について事細かに調査内容が記載されている。これを宅地建物取引主任者から説明を
受けるのだが、あまりに事項が多すぎてイヤになってしまう(筆者も一応は取引主任者なので
重要事項説明をたまにはするが、長いので読むのがイヤになってしまう)。
が、重要なことなのでやはり内容は理解しておきたい。いい加減な不動産業者の
いい加減な重要事項説明のせいであなたが損害を蒙ったときはその不動産業者を
訴えて損害賠償をさせるという方法もあるが、きちんとした不動産業者が
きちんとした重要事項説明をしたにもかかわらず,あなたが内容を理解していないがために損害を蒙ったとしても
誰も助けてくれない。不動産屋の店頭で大声でわめきちらしたり、無言電話をかけまくるなどということを
しても問題が解決しないことは明らかだ。
たとえばあなたが家を建てるために土地を購入したとしよう。
だが、その土地の大部分は計画道路になっていてあなたの思うような家が建てられないとする。
購入した後にいざ家を建てる段にになって設計士からそのことを知らされたとしよう。
いい加減な業者のいい加減な重要事項説明ならば「こんな土地は買わなかった」と
損害賠償を請求することもできるだろう。だが、きちんとした業者のきちんとした
重要事項説明書に土地の大部分が計画道路となっていることが明記してあり、あなたが説明を受けましたという署名と捺印を
してあったら,ぼーっとしていたあなたが悪いで済まされてしまうかもしれない。
ちょっと極端な例かもしれないが、前者のいい加減な業者の話は現実にあった話である。
4.決済・引き渡し
契約という山場が済むと次の山場は決済・引き渡しである(この間にローンの決定などもあるが)。
このときにあなたは手付金を除いた残代金を支払い、家の引き渡しを受ける。同時に所有権の移転登記や
抵当権の設定登記もする。
1日で全て終えてしまうので結構忙しそうだが、なんのことはない。ほとんどの段取りは不動産業者や司法書士や銀行員が
よってたかってやってくれるので、あなたは決済の場所(たいてい銀行だが)へ印鑑や必要書類を持っていき、
署名をしたり押印をしたりするだけだ。あなたは「銀行の店舗はきれいだが銀行内の
会議室は意外に薄汚いな」などと感心していればよい。警戒心の旺盛な方は
なにか落ち着かないかもしれないが、この時点でだまされて失敗するということは
まずない。だまされるとすればこれよりずっと以前の物件の案内時から
だまされているものだ。
現金も払わなければならないが,たいていは手数料や税金関係を支払うだけだ。家の代金は振込となることが多いので借り入れとは
いえ数千万円の現金を一生に一度はこの手につかんでみたいと思われている方には
少し寂しいことかもしれない。
皆がよってたかってやってくれることが多いので、決済は順調に済むがその後あなたが
実際にやることはかぎの引き渡しを受けた家の確認である。
買った家の鍵を開けて中に入ってみたら誰か全然知らない人が生活していた。
なんてことは競売物件でもない限りまずないが、最低限、重要事項説明書や契約書の
内容と相違がないかは確認しておきたい。付帯設備一覧などを見ながらチェックして
不備があれば即不動産屋にクレームを入れておきたい。
5.しもたっ!トラブった!
普通の人が通常の注意をしてありきたりの家を買う場合トラブルが起こることはあまりない(と思う)。
しかし、ビンゴ!あなたがトラブルの1番くじを引いてしまわないとも限らない。そんなトラブルにみまわ
れたときにどうすればよいのか。
ここでいうトラブルとは引越の時に腰を痛めたとか、引っ越してみたら近所のおばさんが意地悪で困ったとか、
消火器をを売りつけに来られてつい買ってしまったなどという種類のものではない。
契約や物件の引き渡しや金銭の授受に絡んで重大な問題が起きてしまったことをいう。
こういった重大なトラブルが起こった場合、当然、不動産業者に対応をしてもらうことになる。
トラブルの原因はさまざまだが、不動産業者が絡んでいる場合が結構ある。
不動産の取引は非常に複雑で一般消費者にはあまりなじみがない。だから、プロである
不動産業者に任せるのであるが、そのプロが知識不足であったり,調査を怠ったりする。
また、営業成績を伸ばしたいがために強引な営業を行ったり,故意に物件について不利なことがらを
教えてくれなかったりする。こんなところが不動産業者がらみのトラブルの原因だろう。
これは不動産業者による仲介の場合、不動産業者自身が売り主の場合のどちらにもいえるだろう。
もちろん、消費者であるあなたに原因がある場合もあるだろうし、仲介の場合売り主に原因があることも考えられる。
いずれにしてもトラブル発生時は不動産業者と納得いくまで解決について話し合いたい。
話し合っても解決しない場合はどうするか。いきなり訴訟に持ち込むのはあまり
いい方法とはいえない。訴訟費用でせっかく貯め込んだ頭金分ぐらいの金額は吹っ飛んでしまうかもしれない。
「自分にも原因があった。いい勉強になったと思ってあきらめよう。」などと考えるのは
心理学的には面白い考察対象になるだろうが、「自分だけ」が悪いのでなければなんとかしてみよう。
ではどうするのかといえば、やはりここは各都道府県の不動産指導課を利用することにしたい。大阪府ならば
府庁にある建築振興課(大阪市中央区大手前2丁目 TEL 06−6941−0351 内線 3082)がこれに当たる。
この役所は悪い不動産業者に対して免許取消や営業停止などの罰則を与える権限も持っているところであり、
悪い不動産業者にとっては頭が上がらないという、まさに水戸黄門的な役所である
(但し、諸国を漫遊して悪い不動産屋を捜し出してやっつけるということはしてくれず、「恐れながら、」
と訴え出て初めて動き出す傾向にあるのは否めない)。
不動産業者がらみのトラブルの場合、
まずはこの建築振興課に相談してみよう(他府県の場合、名称は違うが同じ内容の課がある)。